700ps越えのパワーを完全に手懐ける! 『アストン マーティンDBX S』は、恐ろしくレベルの高いバランス型SUV

公開 : 2026.06.01 11:45

アストン マーティンの最新モデル『DBX S』をドライビングコース、THE MAGARIGAWA CLUBで吉田拓生が試乗します。最高出力727psの4L V8ツインターボを完全に手懐ける、そのシャシーに注目です。

「あくまでルールの範囲内で求めるものを提供」

アストン マーティンの最新モデル『DBX S』を、南房総市にあるドライビングコース、THE MAGARIGAWA CLUBで試乗することができた。

SUVスタイルのモデルとはいえ、メルセデスAMGから供給される4L V8ツインターボ・エンジンの最高出力は727psにも達している。クローズドコースでなければ、とてもその核心に触れることなどできないパフォーマンスといえるだろう。

アストン マーティンの最新モデル『DBX S』をテストドライブ。
アストン マーティンの最新モデル『DBX S』をテストドライブ。    アストン マーティン

昨年デビューし、今回初めて日本における試乗が叶ったDBX Sだが、今どき珍しく、そのパワートレインは48VのBSGしか備わっていない。

その事実に対する興味深いコメントを残してくれたのは、アストン マーティンのアジアパシフィック&グレーターチャイナ担当、リージョナルプレジデントであるカール・ベイリスだった。

彼は「あくまでルールの範囲内でカスタマーが求めるものを提供する」とし、これがアストン マーティンのやり方だと強調する。

実際に彼らはスーパースポーツカーのヴァルハラでPHEV技術を採用しているほか、最新のF1でも(市販はしていないが)電動化モデルを走らせている。レーシングのDNAを持つブランドだからこそ、図抜けたパフォーマンスが必要なときだけモーターによるエクストラパワーを活用しているのである。

これは、真実が見えてこない現代車の電動化事情に対するスポーティなメイクスの姿勢として、的を射ていると思う。

では、今回の主役であるDBX Sにおけるピークパフォーマンスは、どのようにまとめ上げたのだろうか。

フル加速で垣間見た+20psの底力

スタイリングに関しては、グリル内のマトリクスが新デザインになっている以外は、ほぼ『DBX707』のそれを踏襲している。スカットルに据えられた赤いSのエンブレムでそれとわかる程度。そこはアストン マーティンらしく控えめなのである。

DBX Sの白眉といえる727psのパワーは、DBX707から20psアップ。ちなみにM178ユニットのターボ内に仕込まれたインペラはヴァルハラ用とのこと。

DBX707からの変更は最小限というのが、いかにもアストン マーティンらしい。
DBX707からの変更は最小限というのが、いかにもアストン マーティンらしい。    アストン マーティン

そんな事実より感心させられるのは、供給元のメルセデスAMGが、いつも自分たちのモデルよりも高出力のエンジンをアストン マーティンに供給してあげている気前の良さである。

今回はペースカーが入っての試乗だったのだが、だからこそいきなり真剣にスロットルを踏む必要に迫られた。最も長い直線に入ってスロットルを床まで踏み倒すと、野太い排気音とともに、120km/hあたりから全く加速感が緩むことなく230km/hを超えていく。

今回、先導車のプロドライバーがドライブしていたのはDBX707だったのだが、よく観察していると、ストレートエンドでは確実に差が詰まる。これが+20psの恩恵だろうか? 200km/hオーバーでパワー比べができるなんて、クローズドコースならではである。

しかも重要なのは、この速度域でもフロントが浮きはじめてフラフラする感じが一切ないこと。今どきのドイツ系のクロスオーバーSUVのように『実はけっこうなシャコタン』ということもないのに。

また、防音もしっかりとしているので、体感速度はメーターの半分ほどしかない。だから安心してスロットルを踏み抜けるのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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