【8シリーズの一番人気予想】BMW 840d グランクーペに試乗 320psディーゼル

公開 : 2020.01.01 10:20

鋭いハンドリングと高いグリップ力

インテリアは期待通りに優れている。フロントシートの広さも充分で、知覚品質は極めて高い。スマートフォンのワイヤレス充電機能にモニターによる計器類、ヘッドアップディスプレイにプレミアムオーディオなど、標準装備も充実している。

ボディスタイルの好みに関わらず、グランクーペの場合はリアシートも広い。乗り降りもしやすく大人でも座れるが、185cmの身長があるなら長距離旅行は快適ではないかもしれない。足元空間は広々しているものの、ヘッドルームは余裕が少ない。シートクッションは短く、座面が低いから太ももが宙に浮いてしまう。

BMW 840d xドライブ・グランクーペ
BMW 840d xドライブ・グランクーペ

ポルシェパナメーラアウディA7、メルセデスCLSなどの方が、リアシートの空間は全体的によく考えられている。ラゲッジスペースの容積もライバルの方が有利だ。

延長されたボディにも関わらず、2ドアと変わらない穏やかなスポーティさを備え、グランドツアラーとしての資質は高い。試乗車にはアクティブ・リアデフとアクティブ・アンチロールバーなどは装備されていなかったが、ドライバーが望めばダイナミックな操縦を楽しめる能力はしっかり身につけている。

2tに迫る車重にも関わらず、鋭いハンドリングと不安感のないグリップ力、良好な姿勢制御を実現。速度域や路面状態を問わず、ステアリングには一貫した重さと感触があり、大きなボディを正確に導いていける。狭い道でも扱いやすく、道幅を広く活かしながら、より高速でスムーズに走ることが可能だ。

グランドツアラーには少々硬すぎる

840dに搭載される力強いディーゼルエンジンもその一面を担う。非常に静かなうえに、豊かな中回転域でのトルクと良好なレスポンスを兼ね備え、ラグジュアリーGTのフロントに収まるだけの価値はある。

パワートレイン全体も滑らかで変速時の動作も好印象。スポーツという言葉を超える、突出したパフォーマンス性能を得ている。

BMW 840d xドライブ・グランクーペ
BMW 840d xドライブ・グランクーペ

気になるところといえば、ディーゼルエンジンが故の活気のないモノトーンなサウンド。4500rpm以上で回転上昇が鈍る仕草も見られるようだ。

それでも燃費は14.0km/L以上は期待できる。800km以上を無給油で走行できる足の長さを考えれば、選択を躊躇するほどの欠点とはいえないだろう。

2ドアのクーペと同様に、840d xドライブ・グランクーペの引き締まったシャシーは、ラグジュアリー・モデル向けといいにくい。ライバルでは珍しくないアダプティブ・エアサスペンションではなく、従来的なスチールコイルにアダプティブ・ダンパーの組合せを選んだことが大きい。

隔離感のある滑らかな乗り心地と、ダイナミクス性能の両立に苦しんでいるようだ。ランフラットタイヤだったこともあり、落ち着きは感じにくかった。

ドライビングモードでコンフォートを選べば段差を超えた時の穏やかさは増す。それでも充分に振動を吸収したとは思えないほど揺れは直接的。これらを踏まえると、8シリーズ・グランクーペはライバルを指し置けるほどの仕上がりではないといえる。

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