【セナとシューマッハー】F1のヘルメット、高いのはどちら? RMサザビーズ・パリ・オークション

公開 : 2020.02.17 06:10  更新 : 2021.10.11 09:29

「セナ」と「シューマッハー」のヘルメットが、競売に出品。偉大なるワールド・チャンピオンによる予想外の場外対決。どのような結果になったのでしょうか。

フォーミュラ1 レジェンドのヘルメット

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:RMSotheby’s Auctions

近代F1グランプリのグレーテスト・ドライバーといえば、マクラーレンホンダで伝説を創り上げたアイルトン・セナ。そして、フェラーリに黄金時代をもたらしたミハエル・シューマッハーであることに異論を唱える者はいないだろう。

どちらも圧倒的な速さだけではなく、超越したドライビング・テクニックからマシンの開発能力まで並々ならぬ才能を見せつけ、複数のワールド・チャンピオンシップを手にしている。

リビルドされてブラジリアン・カラーにリペイントされたセナのヘルメット
リビルドされてブラジリアン・カラーにリペイントされたセナのヘルメット

そんな2人が使ったヘルメットが、RMサザビーズ・パリ・オークションに出品された。

セナとシューマッハーの直接対決は実質2シーズン半で終えてしまったが、パリでのオークションで競うことになったのは神の悪戯だろうか。

セナのヘルメット 隠された歴史

今回出品されたセナが使用したヘルメットは意外なヒストリーを持っていた。

アメリカのヘルメット専門メーカーであるベル社は、初めてフルフェイス・タイプの「ベル・スター」を送り出したことで知られる。セナが1989年に使用していたのは4輪レース用として開発されたAFX-1のプロトタイプだった。

実は開発用のプロトタイプだったという
実は開発用のプロトタイプだったという

実はこのヘルメットは開発用のプロトタイプで、F1とインディカーで活躍したマリオ・アンドレッティが当初はテストで使用。その後、セナ用にリビルドされて、お馴染みのブラジリアン・カラーにリペイントされるという意外なヒストリーを持つ。

1つのヘルメットを使いまわすということは現在では考えられないが、まだのどかな時代だったようだ。

1990年シーズンで実際にセナが使用したもので、メモラビリアの権威であるコレクター・スタジオによるベル社の社長のサインが記された証明書が付属する。

裁判沙汰 シューマッハーのヘルメット

出品されたもう1つのヘルメットは、ミハエル・シューマッハーが2001年のマレーシアGPで優勝した際に使用していた歴史的価値の高い逸品だ。

ミハエル・シューマッハーは永らくベル社のヘルメットを使用してきたが、安全性の高いドイツのシューベルト社製ヘルメットに切り替える意向だった。

「Marlboro」のロゴが描かれているシューマッハーのヘルメット
「Marlboro」のロゴが描かれているシューマッハーのヘルメット

しかし2001年シーズンは既にベル社と契約を済ませていたため、開幕戦のオーストラリアGPはベル社のヘルメットで参戦するが、終了後に乗り換えることを決意する。

契約を一方的に解消したことによりベル社から告訴され、シューマッハー側が敗訴。高額な違約金を支払うことで決着がついたという。

オーストラリアGPの2週間後に開かれた第2戦マレーシアGPから、シューマッハーはシューベルト社のヘルメットに切り替える。

ここで使用されたのがシューベルトQF1で、おなじみのカラーリングにされていたのは言うまでもない。2001年当時はまだタバコ広告の規制が緩かったため「Marlboro」のロゴが誇らしげに描かれていることに時代を感じさせられる。

こうして初レースとなるマレーシアGPでシューマッハーはトップでフィニッシュを果たし、シューベルトにデビューウインをプレゼントする。その主役がこのヘルメットだったのである。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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