【異変が…】クラシック・フェラーリ、大幅に値下がり コロナ禍の影響か? オンライン・オークション分析

公開 : 2020.07.24 18:03  更新 : 2021.10.11 09:33

フェラーリの相場に異変が…。値上がりを続けてきた跳ね馬。2.4億円予想だった275GTBアロイが、海外オンライン・オークションで大台割れ。80年代から競売を分析してきた上野和秀さんが解説します。

フェラーリの名車 相場に変化

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:RM Sotheby’s

コレクターズカー・オークションで盤石の存在といえるクラシック・フェラーリは、幾度の投機的バブル崩壊を乗り越えて値上がりを続け、特別な存在であり続けてきた。

しかし、そのフェラーリに異変が生じている。

1966年のフェラーリ275GTBアロイ。予想落札額は、邦貨で約2.1~2.4億円だったが……。
1966年のフェラーリ275GTBアロイ。予想落札額は、邦貨で約2.1~2.4億円だったが……。    RM Sotheby’s

7月14日から22日にかけてオンラインで開かれた「RMサザビーズ・オープンロード・ヨーロピアン・サマー・オークション」には、110台の車両と1隻のボート、13点のパーツ、24点のメモラビリアが用意された。

再び猛威を振るいつつある新型コロナウイルスの影響で経済の先行きが不安定ということもあり、オークションを終えてみれば入札は低調だった。

また、最低落札額が設定されていない出品車が多かったこともあり、全体的にお値頃な額で終えていたのが特徴である。

しかし、最も驚かされたのは、クラシック・フェラーリが大きく値下がりしたことだ。

275GTBアロイ 2億円の大台割れ

ヨーロピアン・サマー・オークションの結果を見ると、クラシック・フェラーリが大きく値を下げている。

なかでも注目したいのが、275GTBロングノーズの中で高い人気を誇る、アロイ(アルミ)ボディ仕様の落札額だった。

これまで2億円超えで落札されていたフェラーリ275GTBアロイは、1億7732万円という結果に。
これまで2億円超えで落札されていたフェラーリ275GTBアロイは、1億7732万円という結果に。    RM Sotheby’s

275GTBアロイは、これまで2億円超えで落札されてきた。

それが今回は、事前に発表されていた170~190万ユーロ(2.1~2.4億円)の予想落札額を下回る、143万ユーロ(1億7732万円)で終えてしまったのである。

ライブの本物のオークション会場にある入札の応酬と場の雰囲気がないために、伸び悩んだこともあろう。

出品車両 どんな個体?

この275GTBはスイスのリショズ・コレクションの放出車で、細かなへこみや傷こそあるが大きな弱点はなく、最近では少数派となった使い込んだ普通のコンディションを保つ。

近年のクラシック・フェラーリはどれもコンクール・レベルにレストアされたものが主流になってしまい、走るオーナーにとってはこうした個体が逆に貴重な存在といえる。

今回の落札額は、車両のコンディションを勘案しても予想外といえる安さだった。

値崩れ、10年前の落札額も

今年に入ってからフェラーリの量産モデルは下落傾向にあったが、ここにきてより顕著になった感がある。

今回の結果を見ると、308GTB QVは587万円。330GT 2+2が1426万円。ディーノ308GT4は382万円と、一昔前、2010年頃の落札額に戻っていた。

中期型の白いテスタロッサ。同時出品されたハイミラー初期型を超える1364万円で落札。
中期型の白いテスタロッサ。同時出品されたハイミラー初期型を超える1364万円で落札。    RM Sotheby’s

一方で、定番の365GTB/4デイトナは5388万円。人気の365BBは3342万円。コンディションの良い308GTB(イタリア仕様でASIプレートが備わる)は1092万円。中期型の白いアメリカ仕様のテスタロッサは大化けしてモノスペッツィオ以上の1364万円と、こんな状況下にあっても良いものは相応の評価を受けていることが分かる。

参考に出品されたすべてのフェラーリの結果を紹介しよう。年式、車名の後の(予)は予想落札額、(落)落札額となる。

また、落札額は手数料(10%)を加えた総額で記してある。

1959年 250GT クーペ・ピニンファリーナ:(予)55~65万ユーロ 流札
1965年 330GT 2+2 シリーズ1:(予)12~15万ユーロ(落)12.65万ユーロ(1569万円)
1966年 275GTBアロイ:(予)170~190万ユーロ(落)143万ユーロ(1億7732万円)
1968年 365GT2+2 プロジェクト:(予)10~12万ユーロ(落)10万ユーロ(1240万円)
1970年 365GTB/4デイトナ:(予)40~50万ユーロ(落)43.45万ユーロ(5388万円)
1974年 365GT4 BB:(予)20~30万ユーロ(落)26.95万ユーロ(3342万円)
1975年 ディーノ308GT4:(予)5~6万ユーロ(落)3.08万ユーロ(382万円)
1976年 365GT4 2+2:(予)8~12万ユーロ 流札
1980年 308GTB:(予)9~11万ユーロ(落)8.8万ユーロ(1092万円)
1985年 308GTB QV:(予)5~7.5万ユーロ(落)4.73万ユーロ(587万円)
1986年 テスタロッサ:(予)7~8.5万ユーロ(落)9.13万ユーロ(1133万円)
1987年 テスタロッサ:(予)6~9万ユーロ(落)11.0万ユーロ(1364万円)
1987年 328GTB:(予)7~9万ユーロ(落)7.59万ユーロ(942万円)
1992年 348tb:(予)6~8万ユーロ(落)5.28万ユーロ(655万円)
1996年 456GT:(予)7.5~9.5万ユーロ 流札
2008年 612スカリエッティ:(予)6~7.5万ユーロ(落)6.82万ユーロ(846万円)
2008年 612スカリエッティ60周年限定車:(予)13~16万ユーロ(落)13.75万ユーロ(1705万円)

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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