【新型フェアレディZ】過去の遺産だけで乗り切れるのか 少なくとも今後10年 電動化技術なしの冒険

公開 : 2020.09.29 08:28  更新 : 2021.10.22 10:14

初代をリアルに知るユーザーの共感呼ぶ

フェアレディZを初代に原点回帰させる背景には、まず現在の日産が置かれた状況がある。

直近の経営悪化やカルロス・ゴーン元会長の逮捕などは別としても、近年はルノーとの提携もあり、日産のブランドイメージが曖昧になっていた。

日産スカイライン。世界で勝負することをインフィニティのエンブレムで示したが、現行型のマイナーチェンジでは日産エンブレムに戻した。
日産スカイライン。世界で勝負することをインフィニティのエンブレムで示したが、現行型のマイナーチェンジでは日産エンブレムに戻した。    日産

そこで日産のDNAを改めて明確にすべく、フェアレディZを最も技術の日産らしかった時代の初代モデルへ回帰させる。

現行スカイラインのエンブレムも、以前は海外と共通のインフィニティだったが、マイナーチェンジで日産に戻した。

インフィニティを採用した時は「スカイラインを支えるのは、世界で勝負できる高級車のインフィニティで培われた技術力とデザインだ。従ってエンブレムもインフィニティに変更する」と説明された。

それが現行型のマイナーチェンジでは「スカイラインは技術の日産の象徴。初代モデルも1957年に投入して長い伝統がある。今回はプロパイロット2.0も採用したので、改めて日産のエンブレムを装着する」と述べた。

率直にいってインフィニティでも、日産でも成り立つ話だが、今は日産ブランドを見直す流れだ。そこで新型フェアレディZも、内外装のさまざまな部分に、初代のエッセンスを盛り込んだ。

またスポーツカーの中心的なユーザーが、中高年齢層に達した現実もあるだろう。要は初代フェアレディZをリアルに所有していたとか、憧れた世代を視野に入れている。

もちろんスポーツカーに新鮮味を感じる若いドライバーもターゲットだが、新型のデザインを見る限り、初代からリアルに知っている人達が共感を得やすい。

価格も現行型の売れ筋グレードが450〜650万円だから、購入するには相応の経済力も求められ、中高年齢層が購入しやすい。

今後10年以上は造り続けるなら……

新型フェアレディZが搭載するエンジンは、V型6気筒ツインターボと説明されている。

詳細は不明だが、最も可能性が高いのは、スカイライン400Rと同型になるV型6気筒3Lツインターボだ。

スカイライン400Rの最高出力は405ps(6400rpm)、最大トルクは48.4kg-m(1600-5200rpm)とされ、新型フェアレディZではさらに特別なチューニングを施すことも考えられる。

ただし今の時代に発売する日産の新型スポーツカーとして、ハイブリッドなどの電動化技術を採用しなくて良いのか、という疑問も沸く。

おそらく今後、少なくとも10年以上は造り続けるからだ。

走りの楽しさを純粋に追求するなら、重量増加を抑えて運転感覚を素直にする意味でも、メカニズムは極力シンプルに抑えた方が都合は良い。

しかし日産側の説明には「日産のスピリットそのもの」「事業構造改革の重要なモデル」「Zは私たち日産のDNA」といった言葉が並ぶ。

今後の展開は不明ながら日産には速さを徹底追求したGT-Rもあるから、フェアレディZには、日産の集大成としての技術を盛り込む方法もあるだろう。

つまり外観は初代フェアレディZをモチーフにしながら、中身には電動化を含めて最先端技術を凝縮させ、eパワーや電気自動車の世界観も持たせる発想だ。

あるいはピュアスポーツと電動システムを搭載する2種類を用意する方法もある。

昔から日産とフェアレディZが好きな中高年齢層なら断然ピュアスポーツだが、環境意識が高く発想の柔軟な比較的若いユーザーは、徹頭徹尾走りのスポーツカーはあまり好まない。

電動システムとスポーツを融合させた未来の日産の価値観を表現することも大切だろう。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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