【EVの聴覚体験を広げる】アウディeトロンGT 助手席試乗 新型スポーツサルーン

公開 : 2020.10.16 10:20  更新 : 2021.11.11 13:20

電動化を進めるドイツ・ブランド、アウディ。ポルシェ・タイカンとプラットフォームを共有する、スポーツ・サルーンが2021年に発表予定です。サウンド面での独自性にも注力され、すでに高い完成度へ仕上がっています。

内臓が押し付けられるほどの鋭い加速

text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
「ダイナミクス・モードで、スピーカーからのサウンドを聞いてみてください」。アウディのサウンドエンジニア、ステファン・グセルが声をかける。

ドイツ・インゴルシュタットの自動車ブランド、アウディ初となる純EVのスポーツサルーンを運転する彼は、最もアグレッシブなドライブ・モードに切り替えた。アクセルペダルをフロアへ蹴り倒す。

アウディeトロンGT プロトタイプ
アウディeトロンGT プロトタイプ

合成されたサウンドに集中しようとするが、正直難しい。極めてパワフルな純EVは、猛烈な加速で筆者の内蔵を背もたれ側に偏らせる。少し苦しい。eトロンGTの、動的性能の高さを物語る。

新型コロナウイルスの世界的流行で、ロサンゼルス・モーターショーは中止。クルマの開発スピードに大きな影響はなかったらしいが、華々しい発表の舞台は、見送りが余儀なくされた。

そのかわり、ほぼ完成状態といえるeトロンの助手席試乗の機会が設けられた。残る作業は、細かいチューニングや補正だけだという。

4ドアのボディには、派手なカモフラージュ用のラッピングが貼られている。本来の姿は、完全には確認できない。アンベール・イベントは10月末。もう少しお預けだ。

アウディはドイツのテストコースへ、大勢のジャーナリストを招待した。スピーカーからの合成サウンドを、聞いてもらうように説明している。eトロンGTの開発で、重要な部分の1つなのだろう。

純EVの聴覚体験を拡張する

eトロンGTを運転するグセルは、ミュージシャンとエンジニアによる小さなチームの一員として、サウンド開発に取り組んできた。純EVの聴覚体験を拡張するべく、半年間を投じてきた。

純EVは、低速走行時は特に音がしない。安全を考慮し、歩行者へ自車の接近を知らせるために、何らかの音を発するようルール付けされている。単にドライバーの楽しみのため、だけではない。

アウディeトロンGT プロトタイプ
アウディeトロンGT プロトタイプ

欧州では明確に基準が決まっている。純EVはフロント側のスピーカーから、5km/hから19km/hの間で、音を出す必要がある。バックする際は、リア側のスピーカーから音を鳴らす。

北米では、停止状態でもシステムがオンなら音を発する必要がある。かといって、どの自動車メーカーも単調なブザー音などは選ばないようだ。

一緒に開発へ取り組んだ1人が、ミュージシャンのルディー・ハルブマイヤー。彼とのサウンド開発のプロセスを、グセルが説明してくれた。これだ、とひらめいた瞬間があったという。

卓上の扇風機の前へ、長さ3mの金属パイプをかざしたときに響いた音が、糸口だったらしい。「やりすぎない、ということが1つのチャレンジでした。SF映画などを見ればわかりますが、もっと特別で変わった音も作れたでしょう」

「しかし、純EVの出すサウンドは、毎日のように多くの人が聞かされる音。バランスが重要です」。独自の合成サウンド・ソフトウエアの開発にも苦労したと話す。完成したサウンドは、32種類ものオーディオトラックの組み合わせで構成されている。

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