【静かに滑るように走る】フォルクスワーゲンID.3へ試乗 初期仕様 58kWhで418km

公開 : 2020.10.21 10:20  更新 : 2022.08.08 07:36

VWが生み出した純EVのハッチバック、ID.3。乗り心地に優れ、運転も楽しく、VWらしいクルマに仕上がっています。一方でインテリアの使い勝手など、細かな部分での不満はある様子。英国編集部が初期仕様を評価しました。

203psのモーターに418kmの航続距離

text:Matt Prior(マット・プライヤー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
試乗中、とある町のEV充電ステーションでフォルクスワーゲンID.3に充電ソケットをつなぐと、1人の男性が話しかけてきた。詳しく見せていただけませんか?と。彼は日産リーフに乗っている。

構いませんよ、と答えた。世界で最も多く売れている純EV、日産リーフのユーザーとして、ID.3の登場は大きな出来事だったか聞いてみた。「もちろんです」

フォルクスワーゲンID.3 ファースト・エディション・プロ・パワー(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.3 ファースト・エディション・プロ・パワー(英国仕様)

ID.3にできるようなことは、彼のクルマでも大体できる。ほかの新しい純EVでも。それに、以前からフォルクスワーゲンは純EVを販売してもいる。一方で最新のID.3は、まだブランドが目指すところの道半ばといった印象がある。

AUTOCARでは何度かご紹介しているが、フォルクスワーゲンID.3は、MEBと呼ばれる純EV用のプラットフォームを基礎とする。全長は4261mmと、ゴルフの4284mmとほぼ同じで、ホイールベースはID.3の方が長い。

車内空間も広いと、フォルクスワーゲンは主張している。最高出力203psのモーターは、リアアクスル側に載る。フォルクスワーゲンの起源、ビートルと同様にリアモーター・リアドライブだ。

58kWhの容量のバッテリーを床下に搭載し、WLTP値で418kmの航続距離を得ている。充電器は、100kWまでの容量に対応。フロントにはインバーターなどが搭載され、ビートルのように荷物は積めない。

今回試乗したのは、初期のファースト・エディションと呼ばれる仕様だった。

モニターに集約された車内の操作系

リアシートの後ろには、高さのある荷室が用意されている。リアシートは分割可倒式で、ハッチバックに実用性を与えている。全高は1568mmあり、前後シートともに頭上空間にもゆとりがある。

インテリアは、組み立ての品質は高いものの、場所によって傷つきやすい素材が用いられている様子。ドア内張りの上部にも。

フォルクスワーゲンID.3 ファースト・エディション・プロ・パワー(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.3 ファースト・エディション・プロ・パワー(英国仕様)

ファースト・エディションの価格は、英国政府の補助金適用後で3万5215ポンド(475万円)から。車両価格は高いもののガソリン代は不要だから、ID.3を長期間所有するコストは、安価なガソリン車と変わらないと主張する人もいるだろう。

だが、それは自宅などで電気を安価に充電できれば、の話し。英国の路上にある充電器で充電を繰り返していると、エネルギーコストは増えてしまう。

車内には、ボタンがほとんどない。ヘッドライトのスイッチや、ステアリングホイール上のショートカット・スイッチくらい。フォルクスワーゲンは車内で操作する機能を、可能な限りモニターに集約している。

音声認識システムでの操作も可能。エアコンの操作パネルは、やや反応が不安定だった。

このインテリアデザインは、見た目はクリーンなものの、機能性では落ちてしまう。正直にいって、自身で所有していた1973年式のフォルクスワーゲン・ビートルより、エアコンの温度調整は面倒に感じた。

慣れれば、言葉で話しかけてエアコンを入れることもできる。子供がお父さんに暖房を入れて、とお願いするように。

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