【王者と出会う】新型メルセデス・ベンツGLS試乗 5m超サイズのディーゼルSUV 価格/3列目シート/走りを評価

公開 : 2020.10.27 17:20  更新 : 2021.12.27 23:56

ディーゼルの静粛性能について

3Lディーゼルの最大トルクは71.4kg-m。相当な車重といっても、トルクウェイトレシオは約36kg/kg-mでしかない。

標準的なNA 2Lなら負担車重は800kgを下回る計算。大した踏み込みもせず、回転をさして高めず悠々と走るのも当然だ。

GLS 400 d 4マティックの前席内装。乗員のそばにはマイクが埋め込まれており、声を荒げずとも1列目と3列目で走行中に会話ができた。
GLS 400 d 4マティックの前席内装。乗員のそばにはマイクが埋め込まれており、声を荒げずとも1列目と3列目で走行中に会話ができた。    前田恵介

組み合わせられるミッションはトルコン式の9速AT。巡航回転数は1500~2000rpm。

大トルクで強引に回転数を下げることもなく、現代の標準的な常用回転域設定だ。

もっとも、変速はアップ/ダウンともに細かい。

多段変速の優位性を考慮すれば当然だが、ペダルコントロールへの追従だけでなく、リズム感のあるドライブフィールにも繋がる。

レブリミット近くまで回しても加速のダレは少ないが、回転を高めなくても操り心地がいい。

余力たっぷりでエンジン音も静か。ロードノイズの遮断性もいい。

騒音源が床下深くにあるような静粛性が独特。

加えてマイクを利用した会話システムで前席・サードシート間でも声を張らずに会話できる。車内コミュニケーション能力も優れ物だ。

3列目の内装/トランクは?

サードシートを使用してなお上級2BOX車相当の荷室容量を備え、前席/セカンドシートには及ばないまでも、サードシートの座り心地も良好。

大きなクォーターウインドウのお陰で見晴らしもよく、長距離走行も苦にならない居心地だ。

GLS 400 d 4マティックの3列目シート。
GLS 400 d 4マティックの3列目シート。    前田恵介

付け加えるなら、サードシート用のエアコン吹き出し口やシートヒーターも採用されている。

ミニバン代わりにGLSクラスを選ぶユーザーがそうそういるとは思わないが、2L級1BOX型よりも多人数乗車時の実用性に優れるほど。

ただ、座面地上高が高く、上級本格オフローダーほどでないにしても乗降性は劣り、まして前ヒンジドアでサードシートにアクセスするのは一苦労。サードシート収納の大容量荷室が標準と考えるべきだろう。

ちなみに、サードシート収納時の荷室容量は1350L。

ゴルフバッグを縦積みできるほどの奥行きがあり、一般的なステーションワゴン以上の積載性。

これで足りなければ、大型ミニバンしか選択肢がないというべきレベル。サイズを無駄なく活かしたキャビン設計である。

「買い」か?

正面からぶつかる競合車として思い浮かべたのはランクル(200型)とそのレクサス・バリエーションとなるLXだ。

プレミアム性を考慮するならLXを当てるのが順当だろう。

GLS 400 d 4マティックの2列目シート。
GLS 400 d 4マティックの2列目シート。    前田恵介

LXは5.7LのV8を搭載し、約1136万円。GLS 400 d 4マティックが1263万円。100万円以上の価格差があるが、車両価格ベースなら1割強であり、現実味は十分だ。

両車ともに悪路踏破性、キャビン実用性など正統派SUVなのだが、オン&オフロードのバランスが異なる。

GLSクラスもオフロードにこだわってはいるが、LXはラダーフレーム/リア・リジッドアクスルの本気オフロード仕様。搭載エンジンも商用系であり、タフネスを優先した設計。

さすがにオンロードでの走りの質感や快適性はGLSクラスに及ばない。MB車ラインナップからすれば、Gクラス寄りのポジションなのだ。

言い方を換えるなら、オフロードのヘビーユーザーを除いたSUVユーザーにとって、GLSクラスは高レベルのウェルバランス型。

ハードクロカンと悠々たるツーリングを両立したのが魅力。アウトドア趣味も含めて多様な楽しみ方を求めるユーザーには、1200万円超の価格も十二分に納得。

オフローダーの頂点ではなく、SUVの頂点モデルなのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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