【トヨタ・クラウン大幅減】販売台数、先代末期をも下まわる 「若返り」裏目に アルファードの影響も

公開 : 2020.10.27 05:50  更新 : 2021.10.22 10:14

若返りを図ったものの裏目に出て苦戦

新型のグレード構成については、1970年代からクラウンの上級グレードとして高い人気を得てきたクラウン・ロイヤルサルーンが廃止されている。

その代わりにスポーティ指向のRSが用意された。

トヨタ・クラウンRS(2018年)
トヨタ・クラウンRS(2018年)    トヨタ

現行クラウンが内外装のデザインやグレード構成を大幅に変えた背景には、ユーザーの高齢化に歯止めを掛けて、若返りを図るねらいがある。

開発者は「近年のクラウンのお客様は、平均年齢が65歳から70歳に達していました。現行型では、中心的な年齢層を40歳から50歳まで引き下げたいです」とコメントしてくれた。

このほか従来型には、V型6気筒3.5Lのハイブリッドのみを搭載する最上級シリーズのクラウンマジェスタがあったが、これは廃止された。

V型6気筒3.5Lハイブリッドは、上級グレードに搭載して、ボディバリエーションは減らしている。

さらにプラットフォームはレクサスLSと共通化され、走行安定性を向上させた。その代わり乗り心地は、従来よりも硬めの設定になっている。

運転感覚はクラウンらしさが薄れ、メルセデスベンツなどの欧州車に近付いた。

このクルマ造りの若返りが裏目に出て、売れ行きを下げたと考えられる。

アルファード好調もユーザーを奪った

クラウンの売れ行きが下がったことに関して、販売店からは以下のような話が聞かれる。

「最近は、今までクラウンを購入していた法人のお客様が、Lサイズミニバンのアルファードに乗り替えるようになっています」

トヨタ・アルファード。クラウンの売れ行きが下がった背景には、アルファードの好調な売れ行きもある。
トヨタ・アルファード。クラウンの売れ行きが下がった背景には、アルファードの好調な売れ行きもある。    トヨタ

「TVのニュースで、政治家などがアルファードを使う様子が活発に放送され、お客様の幅が広がりました」

「アルファードを扱うトヨペット店は、もともと法人営業が強いこともあり、クラウンではなくアルファードを選ぶケースも増えました」

「特に2020年5月からは、トヨタの全店で、すべてのトヨタ車を買えるようになりました。そのためにクラウンを扱うトヨタ店でも、アルファードに乗り替えるお客様が増えています」。

クラウンの売れ行きが下がった背景には、アルファードの好調な売れ行きもあるわけだ。

トヨタの全店が全車を扱うようになった影響もあり、2020年9月には、アルファードが1万台以上登録された。クラウンの5倍以上の売れ行きだから、需要がアルファードに移ったとも考えられる。

クラウンは今でもLサイズセダンの最多販売車種で、フーガやレジェンドに比べると、登録台数は圧倒的に多い。

それでも安泰ではなく、ミニバンのアルファードに脅かされている。トヨタの敵はトヨタといえるだろう。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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