【詳細データテスト】ザ・グッドイヤー・ブリンプ 快適至極な空の旅 ファミリーカーの街乗りより静か 飛行機より船に近い乗り心地

公開 : 2020.12.19 20:25  更新 : 2021.03.05 21:27

内装 ★★★★★★★★★★

ゴンドラとも呼ばれるコクピットと乗員用コンパートメントは、構造部がカーボンファイバー製で、気球の前寄りに据え付けられる。乗降時には軽量なアルミ素材のステップを、地上スタッフが後方側面にあるドアの下側に引っ掛ける。

1歩めは大股になる。ステップが地上からやや浮き上がっているからだ。そこから5歩上がると、そこには明るく開放的なキャビンがある。ひとり掛けのシートが並ぶ旅客機のようなレイアウトで、左右の壁に沿って6席、後端に2席というのが標準的な配置だ。

コクピットは左右1席ずつ。操縦はひとりでできる設計だが、操作の負担を軽減するため、基本的には2名のクルーが乗船することになっている。
コクピットは左右1席ずつ。操縦はひとりでできる設計だが、操作の負担を軽減するため、基本的には2名のクルーが乗船することになっている。    OLGUN KORDAL

ただし、われわれが乗船した際には、ひと組が取り外され、テレビ視聴用の機材が設置されていた。なぜなら、このときは24時間レースをフィルムに収めるためル・マンへ向かうフライトだったからだ。

そうした装備が積まれていることは、このブリンプでは珍しくないようで、ほかにも科学的な機材や調査機器を搭載することもあるらしい。キャビンは融通が効く設計で、この飛行船自体もさまざまな用途に対応できるのだ。

柔らかい天井のほうがフロアより面積の大きいゴンドラは、薄いプラスティックの窓が大きなエリアを占め、この上ない眺望を提供してくれる。一般的な巡航高度が300mほどなので、室内は加圧する必要がなく、窓は2か所が開閉可能だ。

メインドアの反対側、キャビン右側には、トイレまで設置されているのだが、これがまた眺望抜群。これが欠かせない設備だということは、乗ってまもなく知ることになる。このブリンプの飛行持続時間は、乗員が生理現象を我慢できる時間を凌ぐのだ。

その開放感は、前端に2席備わるパイロットシートでも同様だ。そして、ここにこそわれわれ最大の関心事が存在する。読者諸兄も気になっているはずだ。

そこには航空電子工学の粋が満載され、クルーだけでなく乗客であってもそのすべてを視界に収めることができる。見方を変えれば、ハイジャックの心配をする必要がない航空機なのだということもまたできる。

操縦席のシートは、後部のパッセンジャーシートより広く快適。山積みの操縦機器が並んでいても、すばらしく見晴らしがいい。ヘリコプターのように、足元まで窓がついているのだ。

ほとんどの航空機がそうであるように、所狭しと詰め込まれた機器をはじめて目にすると困惑を覚える。だが、しばらくそれを観察していれば、それらがなにをするための装置であるのかは次第に理解できるようになる。

消火システム、回路遮断機、そしてヒューズが頭上に並び、気嚢の空気と気球のヘリウムを調整するバルブの操作レバーが天井から吊り下がっている。それらはできれば触りたくないものではあるのだが。

ほかにも、航空機にありがちな二重系統のシステムが数多く用意されている。片方が故障しても、もう片方で操作できるという設計は、空飛ぶ乗り物では定石だ。

このツェッペリンはひとりで操縦できるようにできているが、通常はふたりのパイロットが乗船し、負担軽減を図る。左右それぞれに1系統ずつのバイ・ワイア操縦系が備わり、動翼を操作する。

低速時には、複雑な自動制御システムがローターブレードのピッチをコントロールし、みごとなマニューバリングも、プロペラによる垂直離着陸も、1本のスティックで行える。

すべての工程は、ほとんど音も振動もないままに進行する。エンジン回転数はおよそ2000rpmにとどまり、騒音レベルは60dB程度。ほとんどのクルマが50km/hほどで走る際よりも静かなのだ。

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