【ブランド末期の隠れた名車】 ローバー75とMG ZT 英国版クラシック・ガイド 前編

公開 : 2020.12.20 07:25

ローバーとして、最後の大型4ドアサルーンとなった75。BMWから開発資金の提供を受け、イメージ以上に優れた内容を備えています。MGから、スポーティーなZTも展開されました。英国編集部がその魅力と注意点を解説します。

ローバー製モデルとして最上の内容

text:Malcom McKay(マルコム・マッケイ)
photo:James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

  
自動車ブランドとして波乱の時期に誕生した4ドアサルーン、ローバー75。英国でも高齢な大人が乗るクルマといったイメージが拭えず、部品の入手が難しいという課題を抱えている。

しかし現役当時は優れた完成度を誇り、ローバー製モデルとして最上の内容を備えていた。少し遅れて登場したMGブランドのZTは、若々しいスポーティな走りを実現。フォードマスタング用のV8エンジンを搭載した、後輪駆動版も存在していたほど。

MG ZT(2001〜2005年/英国仕様)
MG ZT(2001〜2005年/英国仕様)

経営難にあえいでいたローバーを救うべく、BMWが開発資金を供出。新しいプラットフォームの開発を可能とした。発表は1998年の末で、英国で発売が始まったのは1999年6月から。

BMWがローバーをフェニックス・ベンチャー・ホールディングスへ売却するまでの1年間は、オックスフォード郊外のカウリー工場で製造。その後、バーミンガム郊外のロングブリッジ工場へ移された。

フェニックス社はモデルレンジを手早く拡充。2001年には大きな荷室と優雅なルーフラインを持つ、75ツアラー(エステート)が追加されている。英国ではBMWによる販売網も、プラスに働いた。

75はクラスをリードするほどの快適性と洗練性を備え、ZTはスポーツセダンらしく軽快に走る。ターボ加給されるKシリーズ・ユニットとCDTiとの組み合わせで、性能と燃費の両立が図られていた。

英国仕様の場合、ローバー75は6種類のエンジンと3種類のトリムグレードを展開。ATも選択可能で、MG TZも含めて多彩なバリエーションが提供された。

紳士的な75とスポーティーなZT

フェニックス社の経験不足が足を引っ張り、ローバー・ブランドは不幸にも最終的に破綻する。それでも、75が存在した頃のローバーはエキサイティングなものだった。若い技術者チームは、自由なモデル開発を進められたのだから。

MG ZTは、単なるローバー75のバッジ・エンジニアリングだけではない。ボディやインテリアのデザインに手が入り、エンジンも再設計。サスペンションやトランスミッションも、MGの手で改良が加えられている。

MG ZT(2001〜2005年/英国仕様)
MG ZT(2001〜2005年/英国仕様)

ゴム製のマウントはアルミニウム製になり、サスペンションのスプリングレートは70%増し。ダンパーやアンチロールバーなどもスポーティーに引き締められ、ブレーキも大型化された。

MG ZT 160を試乗した当時のAUTOCARは、こうまとめている。「75の大人ぶったデザインとロードマナーに手が加えられた、MG ZT。見た目に違わないシャープなスポーティ・サルーンにまとまっています」

「選択肢としての訴求力は高い。ローバーの技術力を証明するものです」。しかし、中古車価格は低迷。長期の放置が、現在では強敵になっている。部品取り車としてバラされることも少なくない。

でも今の英国なら、まだバリエーション豊かな75を選べる。プロドライブ社が開発に関わった4.6LのV8エンジンを搭載する、ローバーV8やMG ZT 260というエネルギッシュな後輪モデルも探せば見つかる。

エンジンは、KV6型やBMW製ディーゼルではトラブルは少なめ。1.8LのKシリーズも、噂ほど恐れる必要はない。ターボも24万kmくらいはノントラブルで回ってくれる。

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