【いい人=モテるわけではない】アウディA4 35 TFSIに試乗 平穏な時間の積み重ねに価値を見出すモデル

公開 : 2020.12.31 17:45  更新 : 2021.10.11 13:37

マイナーチェンジしたアウディA4アバント35 TFSIに試乗しました。目を引く「飛び道具」はありませんが、かえってそれが信頼に繋がります。

マイチェン版アウディA4アバント

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
photo:Masakatsu Sato(佐藤正勝)

現行型アウディA4の登場は2015年、半年余遅れて2016年に日本導入。

MC前後のA4を比較するとこの新車開発傾向の4年間の変化とアウディの普遍性が見えてきて興味深い。

アウディA4アバント35 TFSI
アウディA4アバント35 TFSI    佐藤正勝

変化は電動化技術の導入。欧州の企業別平均燃費規制もあり、ここ数年は各社ともに電動化率の大幅向上を謳っている。

電動化といってもEVに切り替えると言う訳ではなく、マイルドハイブリッドも含むので市場様相が激変することはないだろうが、欠かせない要素なのは間違いなく、A4もこのMCを機に搭載パワートレインにベルト駆動ISG(BAS)を用いた12V型マイルドハイブリッドを採用。

35 TFSIは排気量を1.4Lから2Lに拡大し、実動力性能と燃費の向上を図っている。

継承は「一目でアウディとわかる」スタイルが雄弁だ。ドアパネルまで手を加えた外観の更新はMCでは異例の大変更。

フェンダー周り全体を張り出させたようなブリスターやフロントグリル上に開口したエアスクープなどによるスポーティなイメージの強化が狙いだが、エレガントで端正な佇まいを崩していない。

むしろ抑えの利いたスポーティ感が理知的な印象を覚える。

外観に比べると内装の変更は少なく加飾等の表面的な変更が主で、居心地や操作動線は大きく変わっていない。馴染みのいいインテリアである。

A4らしい出力特性 MHEVの良さも

排気量は約1.4倍。単純計算なら最高出力は210ps超、最大トルクは36kg-m超となるが、最高出力は同じ150psで、最大トルクは約8%増の27.5kg-m。

排気量のゆとりを活かして実効性の高いトルクを広域で発生させているのがスペックからも読み取れる。

重箱の隅を突けばA4従来車に比べると回した時の加速の伸びやかさ、あるいはターボらしさが減ったとも言えるのだが、排気量増とマイルドハイブリッドの導入はゆとりと扱いやすさをレベルアップ。
重箱の隅を突けばA4従来車に比べると回した時の加速の伸びやかさ、あるいはターボらしさが減ったとも言えるのだが、排気量増とマイルドハイブリッドの導入はゆとりと扱いやすさをレベルアップ。    佐藤正勝

「チューン度」は低下したようにも見えるが、マイルドハイブリッドの効能を考えれば納得できる。

アイドリングストップからの滑らかな走りだしや走行中エンジン停止によるコースティング機能はマイルドハイブリッドならではだが、通常走行時のドライブフィールでは電動駆動アシストの効果をこれ見よがしにはしていない。

専用リチウムイオン電池を備えるとはいえ、12V型マイルドハイブリッドゆえに電動アシスト能力に余裕が少ないこともあるのだろうが、踏み増し時の初期加速反応は穏やかであり、踏み込みが然程大きくならない中にダウンシフトする。

従来車からドライブフィールを大きく違えることなく、力強さを増したような特性はA4らしく思えた。

重箱の隅を突けば従来車に比べると回した時の加速の伸びやかさ、あるいはターボらしさが減ったとも言えるのだが、排気量増とマイルドハイブリッドの導入はゆとりと扱いやすさをレベルアップ。

良質なダウンサイジングターボのドライブフィールはA4のキャラにも似合いであり、高回転の使用頻度とアクセルの踏み込み量を抑えつつ、リズミカルなドライビングを楽しめた。

記事に関わった人々

  • 佐藤正勝

    Masakatsu Sato

    1964年生まれ。1984年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、八重洲PRセンターに入社。86年にF1/ルマン24時間を撮影後何かのスイッチが入ったらしく退社。フリーとなり国内外のレースを撮影。91年に撮影したDTMで、また何かのスイッチが入ったらしくどっぷりドイツ漬けに。現在は撮影のみならず、CS放送でのレース解説や雑誌への執筆も。
  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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