【業態変わる?】出光興産EV参入で見えてきたガソリンスタンドの未来

公開 : 2021.03.18 05:45

石油需要が減少していくなか、出光興産はEV市場へ参入しました。今後のガソリンスタンドのあり方を考察します。

出光がEV市場参入のニュース

text:Kenji Momota(桃田健史)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

あの出光がEV市場に参入。

そんなタイトルの記事がネット上で拡散した。ただ、この話は単なる新型EVの話にとどまらず、本質としてはこれからの日本社会の在り方を問うような根の深い話だと思う。

公開された超小型EV
公開された超小型EV    出光興産

それは、ガソリンスタンドの生き残りを踏まえた、「町全体の生業」についてだ。

まず、今回の発表概要を紹介する。

出光興産が、タジマモーターコーポレーションと超小型EVなどを開発する、株式会社出光タジマEVを2021年4月1日に設立する。

タジマモーターといえば、自動車業界では「モンスター田嶋」の愛称で知られる田嶋伸博会長の多彩な経営手腕によって、ラリーなどオフロード競技、高級輸入車の販売、小型カメラのゴー・プロの販売、そして近年ではEVを使った各種実証試験へも参画している。

新設される出光タジマEVでは、2019年の東京モーターショーでタジマモーターが出展した車両をイメージし、2022年を目途に量産化する予定だ。

ショーモデルのスペックは、全長2495mm×全幅1295mm×全高1765mmの4人乗りで、モーターの最高出力は20.4ps、バッテリー容量が10kWh、交流の普通充電で8時間充電し、航続距離は約120km。価格については「150万円程度を目指す」(田嶋氏)という。

同車は国土交通省が新たに定めた超小型モビリティ規定に準ずる。超小型モビリティといえば、トヨタが……。

超小型モビリティ時代の到来か?

トヨタが2020年12月に発表した、シーポッドについては、「これが未来の軽自動車の姿か」とか「2035年までの政府方針、軽を含めた新車電動化で軽自動車の規定がなくなり、シーポッドのようなクルマが当たり前になるのか」といった声が、ユーザーや販売店の間で一気に広がった。

そこへ、今回の出光タジマEVの発表となり「超小型モビリティ時代がついに到来」といった切り口の記事がネット上に目立つ。

トヨタ・シーポッド
トヨタ・シーポッド    トヨタ

筆者は、国土交通省が2010年代初めに超小型モビリティ構想を立ち上げた直後から、同省に直接取材したり、また全国各地でおこなわれた超小型モビリティ関連のさまざまな実証試験を現地取材してきた。

そのうえで、前述にように今回の話は単なるEVではなく、もっと根が深いと思う。

出光タジマEVに出資する出光興産といえば、いわゆる石油元売りとして、一般的にはガソリンスタンド事業で馴染みが深い。

そうした石油化学だけではなく、地熱発電や風力発電など再生可能エネルギー事業や、新素材開発など多角的な研究開発を進めていることでも知られている。

出光興産は「100年に1度の自動産業変革」に対して、さまざまなシナリオを具体的に描き、その詳細を中期経営計画のなかで公開しながら、自社の進むべき将来の方向を模索している。

シナリオは大きく4つある……。

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