【曲線美な2台のクーペ】ロールス・ロイス・シルバーシャドウMPWとメルセデス・ベンツ280 SE 3.5 後編

公開 : 2021.05.16 17:45  更新 : 2022.08.08 07:31

柔らかな曲線美に魅了されてしまう、シルバーシャドウMPWと280 SE 3.5。稀有なエレガントさを放つ2台を、英国編集部がご紹介します。

豪奢さで感心させられるのはロールス

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
メルセデス・ベンツ280 SE 3.5は、豪華なシートへのアクセスがしやすい。リアシートはロールス・ロイス・シルバーシャドウMPWもゆったりしていて、膝まわりの空間に余裕がある。荷室も大きい。

車内の広さや豪奢さを比べると、シルバーシャドウMPWの方が数段上に感じられる。金庫のようにずしりと閉まる、280 SEとは違う。それでも内装素材や仕立て、細部の作り込みまで、感心させられるのはロールス・ロイスだ。

ロールス・ロイス・シルバーシャドウ・ミュリナー・パークワードとメルセデス・ベンツ280 SE 3.5クーペ
ロールス・ロイス・シルバーシャドウ・ミュリナー・パークワードとメルセデス・ベンツ280 SE 3.5クーペ

メルセデス・ベンツも、ダッシュボードは美しい細工が施され、スイッチ類の動作からも高品質を感じ取れる。光沢のある艷やかな木パネルも、ピタリと設えられている。同時にプラスティック製の部品も散見され、少し普通のドイツ車的な見え方もする。

ハンドメイドか量産か、という違いではない。ロールス・ロイスには少量生産の特別なモデルだという雰囲気を濁す、不器用なディテールが備わらない。

走行時のフィーリングにも、同じ印象を受けた。280 SE 3.5のパワフルでドライなノイズを好むドライバーもいるだろう。しかしオーバーヘッド・カムのメカノイズと、インジェクターの動作音も同時に響いてくる。

ロールス・ロイスはアイドリング時から静か。シルキーと呼びたくなるほど滑らかに、堂々と加速していく違った世界観に心が奪われる。

パーソナルな車内は居心地が良い

加速が鋭いのは、280 SE 3.5の方。フロアからシフトノブが伸びる4速ATは、202psを巧みに引き出してくれる。シームレスとは呼べないものの、活発にクーペボディを引っ張ってくれる。

車重も、1569kgと2185kgで280SE 3.5の方が軽量。160km/hまでの加速も短時間でこなせた。しかし実際に路上で比べてみると、数字ほどの差は感じられない。

ロールス・ロイス・シルバーシャドウ・ミュリナー・パークワード(1966-1971年/英国仕様)
ロールス・ロイス・シルバーシャドウ・ミュリナー・パークワード(1966-1971年/英国仕様)

回転数を上げるほどノイズが増えることを嫌い、ロールス・ロイスは排気量を大きくし低回転域から太いトルクが得られるように設計してある。おかげで、走り出せば変速する手間がほとんどいらない。

最高速度は201km/hと186km/hで、やはり280SE 3.5が速い。でも高速巡航する安楽さではロールス・ロイスの方が有利だ。

160km/hで飛ばしていても、シルバーシャドウMPWは圧倒的に静か。ロードノイズが過剰に聞こえてくるものの、車外からの隔離性が高く、パーソナルな空間は居心地が良い。

トランスミッションは、4速のハイドラマティックと呼ばれたATが載っている。2速で53km/hだが、3速で112km/hとのギャップが大きい。穏やかな場合は滑らかなものの、アクセルペダルを踏み込むと変速を実感できる。

カーブでは、コラムレバーで3速を選ぶと良い。ロングテールのメルセデス・ベンツから眺めるシルバーシャドウMPWは、期待ほど回頭性が良いとはいえないようだ。

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