【タダのレプリカにあらず】ベルスポーツ&クラシック・フェラーリ330 LMBへ試乗

公開 : 2021.05.07 08:25  更新 : 2022.04.14 16:59

ピタリと合ったアルミ製の美しいボディ

職人の手で打ち出されたアルミニウム製のボディは、当時のフェラーリより高精度。ドアやボンネットのフィッティングはタイトで、チリはピタリと合っている。塗装の仕上げも美しい。

ウインドウ周りの部品やシフトレバーのアルミ製ハウジングなど、多くの部品が新しく制作された。既存の入手可能な部品は、充分な品質だと判断されなかったのだという。

ベルスポーツ&クラシック・フェラーリ330 LMB(英国仕様)
ベルスポーツ&クラシック・フェラーリ330 LMB(英国仕様)

フロントフェンダーの後ろにあしらわれている、スクーデリア・フェラーリの黄色い盾は、かつてと同様に手書きされている。近寄って見ると、重ね塗りされたペンキの凹凸がわずかに見える。

1960年代のフェラーリの多くが後にアップグレードされているように、このクルマにも同じ内容が与えられた。インテリアは豪華さを増し、交通渋滞でも涼しい顔を保てるように電動の冷却ファンが付いている。必要な防音処理も。

現代的な燃料タンクも積んでいる。漏れやすいリベット止めの、オリジナルのタンクの内側に。

トランスミッションは、ドッグレッグ・パターンを持つレース仕様の4速MTではなく、5速MT。変速しやすいように、ギアの速度を調節してくれるシンクロメッシュも備わる。

日常的な速度域であっても、ドライビング体験は唯一無二。V型12気筒は、低回転域でも驚くほど扱いやすい。回転域を高めると、素晴らしいサウンドを放つ。2021年の水準でいっても、動的性能は感心するほどに活発だ。

本物と同じくらい特別な体験

5速MTは滑らかに変速を受け付けてくれる。ブレーキは不安ないほどに強力。オリジナルのLMBには、当時としては珍しくサーボが搭載されていた。このクルマにも、もちろん付いている。

サスペンションは驚くほどしなやか。オリジナルの快適性も、当時の優れた能力の1つだった。

ベルスポーツ&クラシック・フェラーリ330 LMB(英国仕様)
ベルスポーツ&クラシック・フェラーリ330 LMB(英国仕様)

サイドウォールの厚いミシュランXWXタイヤは、プッシュし始めると早々にグリップを失い出す。しかし変化は漸進的で、充分に予想できる範囲。ステアリングホイールを握る手のひらには、フロントタイヤからの豊かなフィードバックが伝わってくる。

多少混んでいる一般道でも構わない。制限速度の範囲でも構わない。クラシック・フェラーリを運転するという体験は、最高にエキサイティングだ。

このベルスポーツ&クラシック・フェラーリ330 LMBは、1台限りのワンオフ。シリーズ生産する予定はない。

ベルスポーツ&クラシック社のワークショップでは、Lシリーズのディーノと275 GTBが次の作業を待っている。もし自身のクラシック・フェラーリを今回の330 LMBのように仕立てたいのなら、誰でも依頼が可能だという。

夢のクルマを少しだけ身近に手に入れることができる、手段の1つだ。本物と同じくらい特別な体験を、精巧なレプリカなら得ることは可能なようだ。

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