【人気だけが理由ではない】日産ノート/キックス eパワー専用車になったワケ

公開 : 2021.05.15 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

日産を支えるノート/キックスはeパワー専用車となりました。ノーマルエンジンを用意しない理由を考察します。

売れ筋ノート/キックスはeパワーのみ

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

今の日産の売れ筋車種は、小型/普通車のノート+セレナ+キックスと、軽自動車のデイズ+ルークスになる。

2021年1~3月において、上記5車種の販売台数を合計すると、この時期に国内で新車として売られた日産車の73%に達する。

日産キックス
日産キックス    日産

つまり今の日産の国内販売は、上記5車種が支えている。エクストレイルエルグランドスカイラインなどは、すべて残りの27%に含まれてしまうのだ。

そして売れ筋になる小型/普通車のノート+セレナ+キックスは、すべてハイブリッドのeパワーを用意する。

とくにノートとキックスは、eパワーのみになるから、ノーマルエンジンは選べない。

プリウスアクアのようなハイブリッド専用車だ。

合理化のためにノーマルエンジンを廃止

なぜノートはeパワーだけでノーマルエンジンを用意しないのか。

この点を開発者に尋ねると、以下のように返答された。

日産ノート
日産ノート

「現行型のノートは国内専用車だ。海外ではマイクラやジュークを扱うため、ノートは国内のみの販売とした。そこで開発費用を集中させて効率化を図るため、ノートはeパワーに絞った」

「先代ノートのeパワーで販売比率が75%に達した事情もある。また現行ノートは、内装の質を大幅に高めた。このつくり込みは、価格が200万円を超えるeパワー専用車だから可能になったものだ」

「仮に160万円前後のノーマルエンジン車を用意したら、コストを抑えるために別のインパネを用意する必要が生じた」

キックスをeパワーのみにした理由は以下のとおりだ。

「キックスは以前から海外でノーマルエンジン搭載車を販売していたが、eパワーは実質的に日本仕様が最初になる。ノーマルエンジン車に比べるとボディ剛性が高く、走行性能から乗り心地まで幅広く向上させた。従来のキックスとは違うクルマで、それはeパワーの搭載によって可能になった」

キックスでは、タイで生産される輸入車であることも、eパワーに特化した理由に含まれる。

輸入車はバリエーションを増やしにくく、キックスはeパワーのみにして、グレード構成もシンプルに抑えた。

以上のようにノートやキックスがeパワーのみにした背景には、ハイブリッドの高人気と、開発や生産の合理化があった。

ほかの車種をみても、新型になったヴェゼルはハイブリッドのe:HEVが中心で、ノーマルエンジンは1グレードしか用意されない。

またヤリスのハイブリッド比率は46%だが、ヤリス・クロスは61%と高い。ヤリスは価格の安い1Lエンジンも用意するので、ノーマルエンジンの需要が増えたが、ヤリス・クロスではハイブリッドの売れ行きが上まわる。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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