独自のワイガヤ文化活用にホンダらしさ!AI研究論文を国際会議が採択【概要、本質、期待!自動車ニュースを読む】

公開 : 2025.05.27 11:05

毎日のように発信されるプレスリリースの中から1本をピックアップし、概要、本質、期待の3項目で分析するコラムです。ジャーナリスト橋爪一仁が、ホンダの『マルチエージェント型AIシステム』研究論文を国際会議が採択したというニュースを解説します。

【概要】ホンダの『マルチエージェント型AIシステム』研究論文を国際会議が採択

先日、ホンダの研究論文が、機械学習や深層学習の分野におけるトップレベルの国際会議『ICLR 2025 Workshop Agentic AI』で採択された。

自動車開発の現場では、多種多様な課題への回答や示唆を生成できるLLM(ラージ・ラングエッジ・モデルズ=大量テキストデータを学習して自然言語の理解と生成を行う生成AIの基礎技術モデル)活用に期待が寄せられるが、現状は各分野の専門家が議論して開発を進める。

ホンダの『マルチエージェント型AIシステム』研究論文が国際会議で採択された。
ホンダの『マルチエージェント型AIシステム』研究論文が国際会議で採択された。    本田技研工業

これまで、単一のLLMによるAIエージェント(LLMに繰り返し入出力を行い、タスクに対して自律的に計画、実行、改善を行うAIソフトウェア)では、高度に専門性の異なる分野を横断する合意形成に限界があるとされてきた。

しかし、『マルチエージェント型AIシステム』は、実際の開発現場のプロセスを活かして各専門性を持つ複数のLLMを使い課題解決を行うため、従来の単一のAIエージェントに比べ、背景情報や解決手法に関する内容の生成精度や出力の安定性に優れる。

さらに、エージェント間の議論スタイルに『分散型』、『中央集約型』、『階層型』、『共有プール型』の4つを設定。比較検証の結果、自由闊達なホンダのワイガヤ文化を参考にした『分散型』に多様な意見が自然に統合される傾向が見られ、それを応用した技術手法が高く評価された。

【本質】AIの進化に向けた取り組みを強化する自動車産業

自動車産業は、自動運転や電動化、コネクティッドといった技術の進化が目まぐるしい変革期にあり、如何に個性や特徴を打ち出すか? が問われる『ブランドオリジナリティ』の時代である。

高度に複雑化したさまざまな最先端技術の進化にAIは欠かせない存在だが、そもそもAIとはソフトウェアの一種で『アーティフィシャル・インテリジェンス』(人工知能)の略称。製品の機能や研究開発他へ用いられることから、AIの進化は技術の進化とおよそシンクロする。

エージェント間の4つの議論スタイルとその特徴。
エージェント間の4つの議論スタイルとその特徴。    本田技研工業

また、一般的に製品等に用いられるエッジAIよりも研究開発等に用いられるクラウドAIのほうがより高度な計算や判断を担う。

今日のAIは、従来のコンピューターに学習させて決められた計算や識別を行うAIから、さまざまな情報を組み合わせて新しいことも可能にする生成AIへ進化を遂げて普及を続けているが、何にでも対応できる汎用AIは未だ実現されていない。

伴い、自動車産業の各社においても独自開発や業務提携、株式取得などによるAI技術の囲い込みが行われ、投資力(資本力)勝負の様相を呈す。

ホンダの『マルチエージェント型AIシステム』は、生成AIとして複数のAIエージェントを用い、独自のワイガヤ文化を参考にしているところがいかにもホンダらしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    橋爪一仁

    Kazuhito Hashizume

    ジャーナリスト。自動車業界を経て現在はアビームコンサルティング(エグゼクティブ・フェロー)。企画業務を中心に自動車のブランド・オリジナリティ時代におけるCASE、DX×CX、セールス&マーケティング、広報、渉外、認証、R&D、工場管理、生産技術、製造等の幅広い領域を研究、アドバイザー業務を中心に活動中。特に自動車を経済と技術の側面から分析するのが専門。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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