エコなだけじゃない 5代目 トヨタ・プリウス(2) 実はクラス最速 運転を楽しめる有能ハッチ

公開 : 2025.05.27 19:07

英国での再販が決まった5代目プリウス 空力への思想が見事に昇華したスタイリング ラウンジのように心地良い車内 見た目を裏切らない動力性能 バランスの良い操縦性 UK編集部が試乗

見た目を裏切らない動力性能 実はクラス最速

流麗なスタイリングを得た5代目トヨタプリウスだが、見た目を裏切らない動力性能も獲得した。0-100km/h加速は6.6秒と、実はクラス最速。ただし、2.0L 4気筒ガソリンエンジンを気張らせる必要はあり、相応の音振を伴うが。

本来の狙い通り、右足を軽く傾けている状態が、プリウスのコンフォートゾーン。プラグイン・ハイブリッドでは、可能な限り電気だけでの走行が維持される。粘り強く高効率で、まるで13.6kWhより大きい駆動用バッテリーを積むかのように。

トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)
トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)

減速時には巧みに充電され、バッテリーの充電が切れることはほぼない。アクセルペダルを強めに踏むと、レスポンシブなトルクで応えてくれる。

充電量が充分なら、ボタン1つでEVモードを選択可能。逆に、充電を優先させることもできる。シフトセレクターをBにすれば、回生ブレーキは1段強くなる。更に細かく調整するには、ステアリングホイール上のコントローラーで選ぶ必要がある。

バランスの良い操縦性 洗練度は上級サルーンに匹敵

まとまりがありバランスの良い操縦性は、特筆すべき強み。グリップ力は限られ、キツめのカーブで強い加速を求めるとフロントアクスルが悶えるが、サスペンションはしなやかでありつつ、姿勢制御は程よくタイト。公道を清々しく走れる。

好印象を生んでいるのが、TNGAプラットフォーム。1545kgと重くはない車重と、低重心も貢献しているはず。プラグインHVのフォルクスワーゲン・ゴルフ 1.5 TSI eハイブリッドより、100kg近く軽いのだ。

トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)
トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)

素性の良いシャシーを活かすべく、トヨタはステアリングも磨いた。レシオはクイックではないものの、比較的小径なステアリングホイールと相まって、滑らかな操舵感を生んでいる。先代と一線を画すほど、調和している。

乗り心地も、概ね高水準。滑らかな国道では、静寂性と快適性は上級サルーンに匹敵する。特に17インチ・ホイールなら。他方、傷んだアスファルト上で活発に操ると、増大する転がり音とエンジン音で質感は減じてしまう。

少々心もとない転がり抵抗の小さいタイヤ

急ブレーキ時は、転がり抵抗の小さいタイヤが少々心もとない。112km/hからの停止距離は49.0mと、短い方ではない。ABSの制御も、もう少し詰められるだろう。また、高速域での風切り音も、くさび型のシルエットから想像するより大きめだった。

運転支援システムの切り替えは、停車中しかできない。制限速度警告は、簡単にオフにできるとうれしいのだが。アダプティブ・クルーズコントロールの制御は、先行車両の動きへ過剰に反応気味。加減速が強すぎるように思えた。

トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)
トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)

今回の試乗では、8.6km/kWhという電費に届く場面も。電気だけで、110km以上走れる計算になる。高い速度域を常用すれば70km程度へ短くなるとはいえ、自宅で充電できる環境があるなら、日々の通勤は電気だけで賄えるはず。

駆動用バッテリーがほぼ空の状態での燃費は、高速道路で19.9km/L。市街地では23.4km/Lまで伸びていた。フル充電にし、ハイブリッド・モードで丁寧に走らせると、平均燃費は26.6km/L。満タンの40Lで、1000km以上先を目指せる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

5代目 トヨタ・プリウスの前後関係

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