確かな実行力がカタチに 5代目トヨタ・プリウス(1) 近未来映画の世界観に重なるボディ

公開 : 2025.05.27 19:05

英国での再販が決まった5代目プリウス 空力への思想が見事に昇華したスタイリング ラウンジのように心地良い車内 見た目を裏切らない動力性能 バランスの良い操縦性 UK編集部が試乗

トヨタが持つ確かな実行力がカタチに

数10年に渡る実績を持つトヨタ・プリウスは、5代目へのモデルチェンジ直前に、英国のラインナップから消えていた。クロスオーバーのC-HRの支持率上昇を受け、年間の販売数は1000台を割っていたが、難解な判断に思えた。

しかし英国での反響を受け、トヨタはそれを覆した。スタイリングは、思わず目線を送ってしまうほど印象的。しかも、英国仕様はプラグイン・ハイブリッドのみの設定となるものの、最高出力は先代の121psから223psへ上昇している。

トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)
トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)

プラットフォームは、4代目も採用していた進化版で、TNGA GA-Cを名乗る。エンジンは自然吸気の2.0Lガソリンで、駆動用バッテリーは13.6kWh。パワートレインの基本的なレイアウトやコンセプトは先代と同じでも、排気量と充電容量は増えている。

蓄えた電気だけで走行できる距離は、カタログ値で80km以上。過去にないほど流暢な操縦性も獲得している。現在のトヨタが持つ、確かな実行力がカタチになっている。

空力特性を求めた思想が見事に昇華

トランスミッションは、e-CVTと呼ばれる電子制御の無段変速。ドライサンプ式で、遊星ギアが組み込まれている。152psのエンジンと、163psの駆動用モーターが個別に最適な回転数で協働できる、有能なシステムだ。

サスペンションは、前がマクファーソンストラット式で、リアがダブルウィッシュボーン式。コイルスプリングと、可変式ではないダンパーが組まれる。ホイールは17インチから19インチまで用意されるが、タイヤの幅は195と、最近のモデルでは細い。

トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)
トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)

全長は4599mmと、5代目から45mmほど短くなった。しかしホイールベースは50mm長く、ルーフラインの頂点が後方へ移動し、精悍なシルエットを生んでいる。フロントガラスは強く寝かされ、角度は21.6度とのこと。

初代プリウスはずんぐりしていたが、魅力的なデザインだった。それ以降も、可能な限り空力特性を求めた、特徴的なスタイリングを得ていた。5代目は、その思想が見事に昇華された印象。シド・ミード氏が描く世界観にも、重なるように思う。

ラウンジのように居心地が良い車内

運転席へ座ると、大きく傾斜したフロントガラスで、思いがけずワクワクする。スポーツカーのコクピットのようで、程よい包まれ感がある。フロントサイドには大きめの三角窓があり、斜め前方の死角も抑えられている。

スリムなシートは美しく、ラウンジのように居心地は良いが、高級感はほどほど。試乗車のデザイン・グレードの場合、シート表皮はファブリック。ダッシュボードは、光沢のあるプラスティック製トリムでアクセントが付く程度だ。

トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)
トヨタ・プリウス・プラグイン・デザイン(英国仕様)

とはいえ、グレードを問わず装備されるシートヒーターがうれしい。ステアリングホイールの握り心地は好ましく、製造品質は高い。エクセル・グレードならシートが合成皮革になり、それ以外の素材もアップグレードされる。

フォルクスワーゲン・ゴルフほどの、満足感ではないかもしれない。だが、高速道路の巡航でも、市街地の渋滞でも、気分の良い時間を過ごせる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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