【魅了させるための700ps】アストン マーティンV12スピードスターへ試乗 88台限定

公開 : 2021.05.28 08:25

大空を感じながら、ゆったりと郊外の道を流すためのロードスター。多くの視線を集めるであろう最新モデルを、英国編集部が評価しました。

アストン マーティン初のスピードスター

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
1950年代に大量のポルシェをアメリカへ輸入した、マックス・ホフマン。レーシングカーのように無駄の削ぎ落とされたオープントップの356が必要だと、ポルシェへ助言をした人物だ。

彼の一言が、スピードスター誕生へ導いたといっても良い。それ以来、多くの信者を生み出し、少なくないスピードスターが各ブランドから発表されてきた。

アストン マーティンV12スピードスター(欧州仕様)
アストン マーティンV12スピードスター(欧州仕様)

近年になると、スーパーカー級のスピードスターへも展開。2009年の、メルセデス・ベンツSLRマクラーレン・スターリング・モスがその皮切りだろう。そして今回、アストン マーティンもスピードスターをリリースした。

ブランドの公道モデルとしては初めて。2013年のCC100スピードスター・コンセプトが、その起源といえる。 

V12スピードスターの英国価格は、76万5000ポンド(1億1475万円)。生産台数は88台の限定となるが、発表から1年が経過した現在、まだある程度のドライバーが申し込める余裕はあるという。今という混乱した時代を物語っているようだ。

最新のアストン マーティンの存在感や衝撃度は、かなりのもの。腕のいいカメラマンの写真でさえ、実態を完全には表現しきれない。非常に美しい。

全体のスタイリングも見事だが、細部に至るまで心が奪われる。ボンネットやフェンダーのカーボンファイバー製エアアウトレットに、ゴージャスな刺繍が施されたシート。ドアのインテリアパネル自体ですら、芸術品と呼びたくなる。

DBSのV12にヴァンテージの骨格

2脚のシートの後ろには、ダブルバルブのリアデッキが伸びる。その峰へは、クリアパネルがあしらわれている。筆者の感動は、ここでは語り尽くせなさそうだ。写真をご覧いただくしかない。

このV12スピードスターとは、どんな存在なのだろうか。メカニズムは、DBSやヴァンテージと遠くはない。巧妙に手を加え、思い切り大胆なボディをまとわせてある。約1年の開発期間を経て、完成されている。

アストン マーティンV12スピードスター(欧州仕様)
アストン マーティンV12スピードスター(欧州仕様)

Aピラーより後ろ側は、ヴァンテージと大部分の構造は共通。それより前にあるのは、5.2LのV型12気筒ツインターボ・エンジンを含めて、DBS譲りとなっている。

サスペンションとカーボンセラミック・ブレーキもDBS由来。トランスミッションは構造上、ヴァンテージのモノとなる。DBSのモンスター級トルクを許容できないため、実は小さくない決断だったはず。

その結果、V12ロードスターの最高出力は700psと、DBSの725psと大差はない。だが最大トルクは、DBSより13.8kg-mほど低く設定された。といっても82.9kg-mもある。

ルックスからして、超軽量でシリアスなサーキット・マシンだと想像するかもしれない。ところが実際は、そうともいえない。

サスペンションは、グランドツアラー志向の設定。専用のカーボンファイバー製のボディを得ているが、車重は軽くはない。非公開ながら1750kg以上はあるようだ。現代的な便利装備も、一式残されている。ルーフとフロントガラスはないけれど。

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