【100周年を祝った眩しい緑】3番目に古いシトロエンDS 19 レストアに17年 後編

公開 : 2021.06.27 17:45

見惚れるほど鮮やかなグリーンに塗られたシトロエンDS 19。17年間というレストアを経てよみがえった1台を、英国編集部がご紹介します。

初期型の魅力を一層強める細部の特徴

text:Jon Pressnell(ジョン・プレスネル)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
シトロエンDS 19のルーフ左右に付くウインカーは、初期型の特徴といえる。これらはトランペット・ド・ジェリコという愛称で呼ばれ、1958年まで黒か濃紺にルーフが塗られたクルマに与えられていた。

だが現オーナーのエマヌエーレ・フィリッピーニの調べでは、色や年式は絶対的なものではないらしい。リアの下を覗くと、1958年まで採用された楕円形のエグゾーストパイプが見える。

シトロエンDS 19(1956年/欧州仕様)
シトロエンDS 19(1956年/欧州仕様)

フロント側には、エンボス加工されたアルミニウム製のエプロンがぶら下がる。1957年5月で廃盤となった、手間の掛かる高価なパネルだ。

インテリアにも、初期モデルとしての特徴が沢山。シートは伸縮性のあるジャージ生地で覆われ、1957年10月以降のパターンの入ったナイロン生地のものより落ち着いて見える。

シングルスポークのステアリングホイールは、ナイロンの細いテープ状の生地が撒かれている。1958年にPVC製テープに置き換わった。灰皿の前面には、アナログ時計が付いている。

ダッシュボードも初期の仕様。当時としてはナイロンを用いた世界最大の一体成型品で、プラスティック製の大きなグローブボックス・リッドが載っている。

1962年になると、ダッシュボードは落ち着いたデザインへ切り替わった。頑丈なスチール製になり、製造も取り付けも、初期のものより容易だったはず。

細かな特徴が、初期のDS 19の魅力を一層強めている。フィリッピーニは、オリジナル・デザインのDSを見つけるために、10年もの時間を投じて探したという。特に、1956年式にはこだわったらしい。

DSを守った前オーナーのアンダーコート

2002年、知り合いのシトロエン愛好家がフィリッピーニへ売却することに同意。念願のDS 19のオーナーになった。

「彼から話をもらい、即答しました。価格は安くありませんでしたが、一生に一度のチャンスでしたからね」。笑って話すフィリッピーニは、イタリア・ヴェローナでシトロエンのディーラーを営んでいる。彼が2代目の店主だ。

シトロエンDS 19(1956年/欧州仕様)
シトロエンDS 19(1956年/欧州仕様)

「1969年に2番目のオーナーが売却してからは乗られることもなく、点々と所在が変わっていたようです。完全なオリジナル状態で改造もなく、サビ1つありませんでした」

「2番目のオーナーはボディの板金修理店を営んでいて、購入直後にアンダーコートを全面的に施したそうです。毎年、再塗布を繰り返してあって塗膜は厚く、アンダーシールを剥がすのに何年もかかりました。でも、そのおかげでクルマは守られました」

「わたしが購入後にしたことは、フロントの補強材を1本交換したことと、フロアのフロント部分とリアフェンダーの補修。フロントガラスの周辺など、ほかのサビやすい部分は完璧な状態でした」

レストアには17年を要し、ボディの修理と塗装は専門業者へ依頼した。長く時間を取られた理由は、部品の調達が難しかったからだ。「初期モデル固有の部品は、特に見つけるのが難しいんです」

「後期モデルとの違いは多く、細かい部分も沢山あります。ワークショップ・マニュアルとパーツリストを読み込み、何年もかけて調べました」

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