【DBX生みの親】マシュー・ベッカー アストン マーティン車両特性エンジニア AUTOCARアワード2021

公開 : 2021.06.15 20:05

ロータスやアストンで活躍するエンジニア、マシュー・ベッカー。英国車の味を決める彼のキャリアをたどります。

現代の英国車に欠かせないエンジニア

text:Matt Prior(マット・プライヤー)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

今年のAUTOCARアワードでムンディ賞(エンジニアリング部門)を受賞したのは、アストン マーティン・ラゴンダの車両特性エンジニアリング担当チーフエンジニア、マシュー(マット)・ベッカーだ。ベッカーは、時として広報担当者を不安にさせるような、さりげない気楽さと誠実さでクルマについて語る人物である。

ベッカーがムンディ賞を受賞したのは、「アストン初のSUVである新型DBXの開発に貢献したから」というだけでは、彼の影響力を過小評価することになるだろう。しかし、この優れた新型SUVが、アストンのラインナップを広げ、利益を上げるために重要な役割を果たしたことは否定できない。そして、このクルマの開発にはベッカーの才能と経験が生かされているのだ。

アストン マーティンDBX
アストン マーティンDBX

アストンのような比較的小規模かつ大グループに属していない企業にとって、この挑戦は決して過小評価できるものではない。

ベッカーは、英シルバーストンのストウ・サーキットに隣接するアストン マーティンの開発工場のミーティングルームで、記者とテーブルを挟んで座りながら、「SUVを作るのが簡単だと思っている会社は間違っていると思います」と話してくれた。

「あのプロジェクトに着手したとき、わたしはSUVを手がけたことがありましたが、かなり初歩的で受動的なもので、DBXに比べれば簡単でした」

父から受け継ぐ天性の才能

2015年にアストンに入社する前、ベッカーはロータスでエンジニアリング部門に所属し、ここでは語ることのできないクルマの開発にも携わっていた。

彼は、ロータスのエンジニアリングの権威であるロジャー・ベッカーの息子として、プロトタイプカーに囲まれて育った。

ロータス・エリーゼ
ロータス・エリーゼ

「父がわたしを迎えに来るときは、いつも違う開発中のロータスに乗っていました。ヨーロッパ、エリート、エクセル、エスプリ、すべてです」

「わたしは将来を強制されたわけではありませんが、幼い頃から脳にチップが埋め込まれていたようなものです。父がどう運転していたか、よく覚えています。なぜクルマを動かしているのかと聞くと、ステアリングの反応、アクスル、ロールの挙動など、ステアリングが必要な情報を与えてくれるのを感じようとしているのだと言っていました」

「12~13歳のわたしには、父が何を言っているのかさっぱりわかりませんでしたが、それがきっかけで、ビークル・ダイナミクスの道に進みたいと思うようになりました」

ベッカーは16歳で見習いを始めたが、現在ロータスの車両特性およびプロダクト・インテグリティ担当ディレクターであるギャバン・カーショウや、マクラーレンでF1テクニカル・ディレクターを務めるジェームズ・キーと同じタイミングだった。

ベッカーは当初、ビークル・ダイナミクスを習うことは許されなかった。エンジニアは23歳からでないと、テストドライビングに参加できないことになっていたのだ。しかし、ロータスの有名な開発ドライバーであるアリスター・マックイーンの指導を受けているうちに、ベッカーには天性の才能があることに気がついた。

「結局、エンジン技術者として働くことになりました」とベッカーは言う。21歳のときにエリーゼの開発エンジニアの仕事が舞い込んできてからは、運転することが仕事になった。

「エリーゼのメタル・マトリクス・コンポジット・ブレーキ、ヒーター・ベンチレーション・システム、ヘッドライトなど、基本的には何でもやっていました。しかし、最終的には『111Sのタイヤ開発をやらないか』と言われ、ついに来たか!と思いました。それが入り口でした」

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