【なぜスイスポ/GRヤリスは人気?】昔から変わらぬ 売れるスポーツモデルの秘訣とは

公開 : 2021.07.27 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

スイフトはその約40%がスイフトスポーツという構成。昔から変わらぬ売れるスポーツモデルの共通項を解説します。

今や手頃なスポーツモデル自体が希少

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

「最近はスポーツモデルが売れない」といわれる。

1990年代までは若いクルマ好きが多く、トヨタ・レビン&トレノ、日産シルビアホンダCR-Xといったスポーツモデルも好調に売られた。

スズキ・スイフトスポーツ
スズキスイフトスポーツ

それが今は若いクルマ好きが減り、スポーツモデルの販売台数も下がり、レビン&トレノやシルビアは廃止された。

走りの楽しいクルマの減少は、若年層のクルマ離れとセットで語られることが多い。

しかし本当にそうなのか? 若年層のクルマ離れがすべての原因か? クルマの側が若年層から離れたこともあるのではないか?

例えば30年前の1991年に発売されたAE100/101型カローラ・レビンは、直列4気筒1.6Lエンジンを搭載する1600GTアペックスの価格が187万4000円(5速MT)だった。

1988年に発売されたS13型シルビアも、1.8Lを搭載した売れ筋のQ’sが176万5000円(5速MT)だ。

1987年に発売された2代目CR-Xは、1.6LのSiが149万8000円(5速MT)であった。

当時は安全装備が乏しく、四輪ABSや運転席エアバッグすら装着されないクルマが多かったが、価格も安かった。

200万円以下で購入できるスポーツモデルが豊富に用意されていた。

最近はこのようなスポーツモデルが減り、売れ行きも下がり、車種が廃止された事情もあるだろう。

今のスポーツモデルの価格は、1.5Lエンジンを搭載するコンパクトなロードスター(ソフトトップ)のSでも260万1500円(6速MT)だ。

装備が充実する売れ筋のRSは、1.5Lでも333万4100円に達する。

この状況を逆に捉えると、運転が楽しくて価格の求めやすいスポーツモデルを開発すれば、売れ行きを伸ばせるのではないか。

そこでスポーツモデルの価格と販売台数をあらためてチェックした。

価格も魅力 スイフトの約40%はスイスポ

価格の求めやすいスポーツモデルを探すと、車種が意外なほど少ない。

前述のとおり1.5Lエンジンのロードスターでも260万円を超える。大半のスポーツモデルは、中心的な価格帯が300万円以上に達するのだ。

スズキ・スイフトスポーツ
スズキ・スイフトスポーツ

その意味でスイフトスポーツは貴重な存在だろう。

価格は6速MTが201万7400円におさまり、なおかつ中身は本格的だ。

エンジンは直列4気筒1.4Lターボで、自然吸気のノーマルエンジンに当てはめると2.3L前後に匹敵する動力性能を発揮する。

サスペンションにはモンロー製のフロントストラットやリアショックアブソーバーが採用され、走行安定性も良好だ。

外観ではエアロパーツや17インチアルミホイールが備わり、衝突被害軽減ブレーキや全車速追従型クルーズコントロールなどの先進装備も標準装着される。

この内容で200万円少々なら買い得だ。

そのために売れ行きも堅調で、2021年1~6月には、スイフトスポーツだけで1か月当たり約900台が登録された。

スイフト全体の40%以上をスポーツが占めている。ロードスターはソフトトップとRFを合計して1か月に約540台だから、スイフトスポーツは圧倒的に多い。

また、スイフトスポーツのトランスミッションは、6速のMTとATだが、前者の比率が60%に達する。

スイフトスポーツはコンパクトで実用的なボディにスポーティな本物指向のメカニズムを凝縮させ、6速MTも用意して、価格は200万円前後に抑えたから好調な売れ行きとなった。

それならほかの車種はどうなのか。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

関連テーマ

おすすめ記事