【クルマ好きの憧れの的へ?】アメリカ発「eマッスル」が変えるEVの価値観 

公開 : 2021.08.25 05:45

アメリカ発eマッスルは、「EVは別物」という価値観を変えることができるのでしょうか。今後のトレンドを考察します。

「eマッスル」が価値観変える?

執筆:Kenji Momota(桃田健史)
編集:Taro Ueno(上野太朗)

今、EVと聞くと、クルマ好きの多くは遠巻きにしながら、今後のトレンドを観察しているような雰囲気がある。

単純に加速力だけみれば、テスラモデルSの最上級モデルは0-100km/h加速が2秒台と、日産GT-Rフェラーリポルシェに匹敵するか、それ以上のパフォーマンスを誇る。

ダッジのマッスルカー「チャレンジャー」
ダッジのマッスルカー「チャレンジャー」    ダッジ

とはいえ、従来のクルマ好きにとってテスラなどEVをスポーツカーとして評価するというユーザー心理には至っていない印象がある。

「EVは別物、EVは別腹」

そんな受け止めなのではないだろうか。

ところが、そうしたクルマ好きのEVに対する違和感を一気に吹き払ってしまいそうな動きがアメリカから出てきた。

その筆頭は、ダッジのeマッスル構想だ。

eとはEVを代表とする電動化を指し、マッスルとは当然、アメ車の真髄ともいわれるマッスルカーのことである。

ダッジの展開するステランティスによれば、ダッジブランドの主力ユーザーは20代後半から30代の世代であり、アメリカの人口の約4分の1を占めるが、この世代は新しい変化に対する関心が高く、ダッジの電動化についても理解を示すはずだというのだ。

ただし、導入するモデルは燃費やCO2規制を優先した、マイルドハイブリッド車など「手ぬるい」電動化ではなく、既存での量産HEMIが誇る600psや700ps級を超える本格的EVを提供する。

第3次マッスルカー時代が幕開け

そもそも、マッスルカーと呼ばれる大排気量、大出力、大トルクのアメ車たちは1960年代の高度経済成長時代の申し子として、「強いアメリカ」を世界に知らしめる役割をしていた。

それが70年代に入り、公害対策の必要性から排気ガス規制強化によって市場から姿を消した。

フォード・マスタング・マッハ1
フォードマスタング・マッハ1    フォード

それから30年以上が経ち、「原点回帰」トレンドが生まれ、フォード「マスタング」はシェルビーチューンとして、またダッジはHEMIの強化が段階的におこなわれ、2010年代は第2次マッスルカー時代と呼べるような市場環境となっていた。

日本市場での正規輸入がなくても、アメリカからの並行輸入によって本場マッスルカーを満喫するユーザーが少数ではあるが、その数は着実に増えていったのだ。

ところが、2010年代後半からグローバルで環境、社会、ガバナンス(企業統治)を重視するESG投資が急激に広まり、それと連動して国や地域での電動化政策が強化に進み、欧州、アメリカ、中国でのEVシフトに転じている。

こうしたグローバルなトレンドを日本が後追いしているのが実状だ。

ダッジのeマッスル構想も、こうしたESG投資を出口戦略とした巧妙なマーケティング手法であり、フォードやGMも独自のeマッスル体制を敷いてくる可能性が高い。

第3次マッスルカー時代の幕開けである。

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