【自分だけの特別なSTに】フォード・フォーカスST エディションへ試乗 KWサス獲得

公開 : 2021.10.03 08:25  更新 : 2021.10.12 16:21

敏捷さとシャシーバランスを向上

コーナーで負荷を高めると、デフが仕事をしていることをトラクションで実感できる。ステアリングの感触に影響を受けることもない。古いRSのように、無粋な振動が手のひらに伝わることもない。

ドライブモードをスポーツやレーストラックに設定すると、操舵感はやや重すぎ、スポンジーな印象も若干受ける。しかし、ステアリングホイールと格闘するほどではない。

ST エディションと通常のSTとで1番わかりやすい違いが、若干落ち着きに欠ける乗り心地だろう。表面の荒れた路面では、車内にロードノイズも大きめに伝わってくるようだ。

そのかわり、引き締められたサスペンションが敏捷さを引き上げている。路面へタイヤはしっかり喰らいつき、シャシーバランスも高められている。正当な対価といえる。

フォーカスSTは従来からシャシー性能に優れるモデルの1台だったが、ST エディションでは一層鋭く回頭していく。アクセルペダルの踏み込み量を調整しながらテールを流し、ノーズを切り込んでいくのも意のままだ。

ESPスポーツと呼ばれるモードが追加され、ESPの介入を抑えつつ、シャシーを積極的に振り回すことも可能。電子制御システムをオフにすると、完全に介入しなくなる。

姿勢制御は、従来のフォーカスSTより数段階引き締められた印象。ボディの動きはより小さく、スマートさすら感じるほど。ドライバー次第で、素晴らしいバランスを備えた操縦性を味わえる。90年代のホットハッチのように。

奥深さを備えるホットハッチ

ST エディションの魅力を完璧に引き出すなら、いつものワインディングやサーキットに合わせて、調整式サスのセッティングを決める必要はある。試乗時の設定では、低速域ではやや乗り心地が硬く感じられた程度だった。

高速道路の速度域では滑らかさが出てくる。手に負えなくなるような場面は限定的。大きめの凹凸でも即座に不安感なくいなし、タイヤの接地性は高いまま。路面がうねっているような区間でも、ボディは常に安定している。

フォード・フォーカスST エディション(英国仕様)
フォード・フォーカスST エディション(英国仕様)

もし筆者自身のST エディションなら、日常的に乗るのは郊外の一般道が中心。車高を少し上げ、ホイールトラベルを長めに確保するかもしれない。伸縮時の減衰力も、もう少し弱めるだろう。

サーキット走行がメインなら、前後の相対的な車高調整もできる。クルマのロール軸を変化させることで、ハンドリングバランスを自身好みに変えることも可能になる。

ホットハッチで、これほどの奥深さを備えているモデルは多くない。もちろん、工場出荷時のままの状態でも充分に楽しめる。乗った瞬間に調整が必要だ、と感じることはないはず。非常に良く仕上げられている。

通常のフォーカスSTも、素晴らしいハンドリング・マシンではある。それでも、ST エディションは買いだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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