【EV化で深まる味とは?】メルセデス・ベンツEQA 250 褒めたい所、気になる所

公開 : 2021.09.28 12:06  更新 : 2022.08.12 03:20

小さいベンツの中でも特筆

同等車体サイズのクルマでは、セダン/ワゴンも含めて最も乗り心地の車格感に優れている。

そこにEVならではの静粛性の高さが加わるのだから、快適性はすこぶる良好である。

メルセデス・ベンツEQA 250の後席内装。前席、左右の後席は、シート座面中央とバックレスト中央部分がスエード調のファブリック。それ以外は人工皮革となる。
メルセデス・ベンツEQA 250の後席内装。前席、左右の後席は、シート座面中央とバックレスト中央部分がスエード調のファブリック。それ以外は人工皮革となる。    宮澤佳久

ハンドリングはサスストローク速度が程よく抑制され過敏な反応がなく、ステア操作で押し込むようにラインをコントロールできる。揺れ返しを意識することもない。

切れ味をモノサシにすると、異論もあるだろうが「何処でも弱アンダーステア」の優等生型の操縦性は、ドライバーのスキルに頼らずに効率的かつ綺麗な操り心地をもたらしている。

フットワークのまとまりや質感でもA/Bクラス系の最上位に据えてもいいくらいだ。

「買い」か?

ちょっと誉め過ぎかなとも思えたが、EVとしてではなく最近試乗した中でも最も走りの洗練されたモデルの1つなのは間違いない。

付け加えるならEVになってメルセデス味も深みを増した。GLAシリーズに対しておよそ100万円高になるが、600万円台のメルセデス車としては買い得感が高い。

一充電の航続可能距離は422km(WLTC)。取材開始時点では、メーター表示で残り「392km」を示していた。
一充電の航続可能距離は422km(WLTC)。取材開始時点では、メーター表示で残り「392km」を示していた。    宮澤佳久

ただし、充電と航続距離が“乗り越えなければならないハードル”として立ちはだかる。

WLTC総合モードでの航続距離は422km。急速充電では蓄電率80%が目安になるので約340km。充電インフラが整っていない地域なら300km強が安心航続距離。

東京起点の箱根観光でもちょっと心許ない。長距離用途なら事前に充電ポイントを決めておく必要もあるだろう。

とはいえタウンユース主体の短中距離用途用に選ぶのももったいない。「さすがMB社のEVだけあって走りは大満足」「やっぱりEVなので航続距離が心配」となってしまう。充電環境や航続距離が気にならないユーザーには大オススメだが、現実的な用途を考えるととても悩ましい。

ちなみにGLCクラスベースで上級クラスとなりメルセデスEQ初の市販モデルとなったEQCのWLTC総合モード航続距離は400kmであり、ステップアップしても航続距離問題は解決しない。

メルセデス・ベンツEQA 250 スペック

価格:640万円
全長:4465mm
全幅:1850mm(AMGライン)
全高:1625mm
0-100km/h加速:8.9秒(欧州参考値)
航続可能距離(WLTC):422km
CO2排出量:0g/km
パワートレイン:非同期モーター
最高出力:190ps/3600-10300rpm
最大トルク:38.2kg-m/1020rpm
駆動方式:前輪駆動
バッテリー種類:リチウムイオン
バッテリー容量:66.5kWh
充電時間(普通充電:ウォールユニット30A):約11h
充電時間(急速充電:50kW):約1.3h

試乗したメルセデス・ベンツEQA 250は、AMGライン装着車のため20インチホイールを履く。
試乗したメルセデス・ベンツEQA 250は、AMGライン装着車のため20インチホイールを履く。    宮澤佳久

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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