【EV化で深まる味とは?】メルセデス・ベンツEQA 250 褒めたい所、気になる所

公開 : 2021.09.28 12:06  更新 : 2022.08.12 03:20

メルセデスの電気自動車「EQA 250」を試乗。ベンツのコンパクトモデルの中でも“走りの洗練度”は秀逸。それでも、乗り越えるべきハードルがありました。

普通/急速 充電の方法は?

「未来は電動」の論議は今さらの感があるが、内燃機との共存期間がどのくらいになるかは検討が難しい。充電や水素のインフラも未整備であり、“当分は共存”とみるのが現実的である。

EQAEQCに続くメルセデスEQ車のエントリーモデルとして、当年4月末に日本に導入された。

メルセデス・ベンツEQA 250(マウンテングレー/AMGライン装着車)
メルセデス・ベンツEQA 250(マウンテングレー/AMGライン装着車)    宮澤佳久

車名を見ても分かるように純電気自動車として新たなラインナップを構築するモデルであり、既存ラインナップと併せて充実を図るのは、共存時代を見据えた対応でありMB社らしい手堅さと先見性の表れとも言える。

その外観を見ても分かると思うが、EQAはGLAをベースに開発。

前後ビューは異なっているがプロポーションや車体寸法はほぼ等しく、都市部でも比較的扱いやすいサイズと成人男性4名でもゆったり過ごせるスペースや見晴らしも継承。

先進イメージが売りではなく、実用性への配慮も利いている。ちなみにFF車のみの設定だが最低地上高(社内測定値)はGLAを上回る210mmである。

充電方式はAC200Vの普通充電とCHAdeMO規格のDC急速充電に対応。EVインフラの未整備はともかくとして、少なくとも輸入EV故の制限は皆無である。

また、ディーラーへの設置も進み、メルセデスEQに限らずEVの使用環境改善でも今後の展開に期待できる。先進性のアドバルーンではなく、定着を目指しているのも好感が持てる。

踏んでみる ペダル操作の反応

駆動用モーターの最高出力は190ps(140kW)。FCVのミライを若干上回るくらいだが、38.2kg-mの最大トルクもあって2tクラスでは十二分。

車重が重いもののAMG車を除いたA/Bクラス系のモデルでは上位のパワースペック。だからといって速さや電動感を誇張しないのがメルセデス流でもある。

メルセデス・ベンツEQA 250の前席内装(内装色:ブラック/レザーDINAMICAレッドステッチ入り/AMGライン装着車)。試乗車は、OPのパノラミックスライディングルーフを装備していた。
メルセデス・ベンツEQA 250の前席内装(内装色:ブラック/レザーDINAMICAレッドステッチ入り/AMGライン装着車)。試乗車は、OPのパノラミックスライディングルーフを装備していた。    宮澤佳久

電動の長所の1つに“即応性”がある。実質タイムラグなしでトルクを増減できる。

逆に言えば、ペダル操作への追従性・過渡特性の設定が開発者の腕の見せ所。

EQAは低中速で力強く、速度上昇による失速感も少ない。市街地や渋滞路でも扱いやすく、そのコントロール性が高速域まで持続。

繊細なペダル操作には追従よく、ラフな操作には繋がり滑らかなトルク増という具合に常に良質な加減速特性を示すのだ。

運転支援の巧みさも見所の1つである。

運転支援とリアサスについて

例えばエンブレ回生は、前方が空いている時は空走に近いのだが、車間距離が短いと強く掛かる。

さらに前方に停止車両がある時は、早い段階でブレーキ操作を促すように強いエンブレ回生が入る。この制御が実に巧み。

メルセデス・ベンツEQA 250は、リアにマルチリンク式サスペンションを採用する。フットワークは「一言でまとめれば良質」と筆者。
メルセデス・ベンツEQA 250は、リアにマルチリンク式サスペンションを採用する。フットワークは「一言でまとめれば良質」と筆者。    宮澤佳久

個々の運転スタイルにもよるのだろうが、筆者の場合はわずかに車速が遅くなったくらいのタイミングで介入。介入具合も程よく、混雑した都市部での運転ストレスの軽減・安心感向上にも大きく寄与。

日常用途も多いユーザーには、ACCやLKA以上に有り難い運転支援機能である。

パワーフィール同様にフットワークも一言でまとめれば「良質」である。高性能やファントゥドライブを殊更にするでもなく、論理的にも体感的にもバランスよく纏まっていた。

A/Bクラス系のリアサスにはトーションビーム式とマルチリンク式(IRS)があるが、EQAが採用するのはマルチリンク式。

車重はGLA 200 d対比で250kg強重い。サス形式も車重も乗り心地には有利だ。

もちろん、単純な物理的条件で決まるわけではないが、そのスペックから期待する以上に洗練されていた。バネ下重量の嵩む大径タイヤ車に多い車軸の揺動も抑えられ、低速から高速までしなやかなストローク感を持続。

しっとりとしていて収まりがいい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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