【なぜ?】マツダ新SUV戦略 直列6気筒+後輪駆動で「マツダらしさ」増すワケ

公開 : 2021.10.20 05:45  更新 : 2021.10.22 10:06

直6エンジンに後輪駆動の組み合わせ

直列6気筒エンジンは、必然的に縦置きになるから、ガソリン、ディーゼルともに新しい後輪駆動のプラットフォームと組み合わせる。

後輪駆動であれば、従来の前輪駆動よりも、前後輪の重量配分をバランス良く保ちやすい。

マツダ・ロードスター
マツダロードスター

しかも加速時には車両の荷重は後輪に加わるので、後輪を駆動すれば、駆動力の伝達効率も高まる。

後輪駆動の2WDでは、操舵は前輪、駆動は後輪と役割を分担するから、アクセル操作によって操舵感が影響を受けにくいメリットもある。

今は前輪駆動でも、操舵感や安定性は十分に満足できるが、感覚的な領域では依然として駆動方式による違いが残る。

だからこそメルセデス・ベンツBMWなどのプレミアムブランドは、今でもミドルサイズ以上の車種に後輪駆動方式を採用しているのだ。
 

ラージ商品群 マツダらしさ濃厚に

そしてマツダは、ドライバーの自然な運転感覚にこだわる。

魂動デザインでは、獲物をねらって疾走するチータが原点にあり、野性動物は主に後ろ足で蹴り上げて前足では進む方向を決める。

マツダ6
マツダ6

したがって魂動デザイン+スカイアクティブ技術の考え方では、前輪駆動よりも後輪駆動の方が親和性が高い。

その表現として、今のマツダ車は、フロントピラー(柱)を手前に引き寄せてボンネットを長く見せている。

これは後輪駆動のデザインに近いが、実際の駆動方式はあくまでも前輪駆動だ。

そのために今のマツダ車の多くは、フロントオーバーハング(ボディが前輪よりも前側に張り出した部分)が長く、視覚的なバランスを悪化させている。

後輪駆動にすれば、この無理が伴う造形を完璧に整えることが可能だ。

つまりマツダのクルマづくりを考えると、ラージ商品群の後輪駆動化は、必然的な発展といえる。

直列6気筒エンジンと後輪駆動を採用したラージ商品群では、セダン&ワゴンの次期マツダ6なども含めて、マツダらしさが一層濃厚になる。

なお、後輪駆動の欠点は、後輪へ駆動力を伝えるプロペラシャフトのトンネルが車内に張り出すことだ。

床面の平らなミニバンを開発する場合は、トンネルをカバーするために床が大幅に高まるが(ハイエースやキャラバンのようになる)、今のマツダはミニバンを開発しない。

したがって後輪駆動の欠点も生じにくい。

プレミアム路線に 商品力向上に期待

マツダのラージ商品群について販売店に尋ねると、以下のように返答された。

「今のところラージ商品群の具体的な販売計画は、メーカーから聞いていない。しかし後輪駆動に変更される次期マツダ6に関しては、お客さまからの問い合わせが多い」

マツダCX-5
マツダCX-5    マツダ

「マツダの計画では、日本で販売される上級SUV(CX-60CX-80)にも直列6気筒エンジンを搭載して後輪駆動になるから、今後はSUVのお客さまからも問い合わせを受けるだろう」

「とくにCX-5は、先代型を含めて保有台数が多く、新型SUVへの乗り替えも想定される。新型車の発売時期など、具体的な情報を早めに流して欲しい」

CX-60やCX-80の外観デザインや価格は、現時点では分からないが、CX-5よりは上級の価格帯になる。

そうなるとCX-8と同等かそれ以上だから、価格の安いグレードでも350万円に達して、売れ筋の価格帯は400~550万円だ。

ハリアーを上まわり、ミニバンのアルファードなどと同等になる。

輸入SUVでは、後輪駆動をベースにした高価格車も注目されているが、プレミアムブランドが中心だ。

マツダがこれからCX-60やCX-80というラージ商品群の高価格なSUVを積極的に販売するなら、内外装や運転感覚を上質に仕上げ、なおかつブランド力も高める必要がある。

そのためには数年後に売却するときの価値も大切だ。

そうなるとラージ商品群のマツダ車は、上質感を中心に、商品力を大幅に向上させるだろう。

マツダのコンセプトにピッタリあった直列6気筒エンジン+後輪駆動を手に入れて、いよいよマツダの開発力が本領を発揮する。大いに期待したい。

記事に関わった人々

  • 上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。
  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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