昔よりクルマが買いづらい? 「所得上がらず、クルマは値上げ」説を検証

公開 : 2021.11.19 05:45  更新 : 2021.11.20 16:50

「所得は上がらないのにクルマは値上げ」説が通説となっている今日。クルマは買いづらくなったのか検証します。

「所得上がらない」を検証

最近は新型車が登場すると「所得は上がらないのに、クルマは値上げされている。買えるワケがないでしょ」というコメントを見かける。

本当だろうか? 具体的に検証してみたい。

ホンダ・シビックのターゲットは20代前半のジェネレーションZだという
ホンダシビックのターゲットは20代前半のジェネレーションZだという

まずは所得について考える。

今まで日本の平均所得が最も高かった時期は、1990年代の前半から中盤だ。

バブル経済は1990年代の初頭に崩壊したが、所得は維持されて、1994年には約664万円のピークを迎えた。

この後、1990年代の終盤になると急速に下がり始め、2010年代の前半は500万円少々まで落ち込んだ。

約10年間で、約150万円(比率に換算すると20%以上)もの所得減少になっている。

この背景には、2008年に発生したリーマンショックによる世界的な景気悪化もあった。

その後は平均所得はプラスに転じたが、2018年の時点で550万円少々だ。

ピークだった1994年に比べると、依然として100万円以上も少ない。比率に換算すると約17%の減少が続いている。

このような所得推移に伴って、クルマの売れ行きも下がった。1990年に国内の新車販売台数は778万台のピークに達したが、2010年には496万台に減り、2020年はコロナ禍の影響も受けて460万台であった。30年前の59%にとどまる。

このように「所得は上がらない」どころか、27年前に比べると大幅に下がった。

それに伴ってクルマの売れ行きも伸び悩んでいる。

クルマの値上げされている?

平均所得がピークを迎えた1994年の日本車の価格を見ると、初代ワゴンR RXは108万3000円であった。

現行ワゴンRハイブリッドFXは128万400円だから、比率に換算すると今は約18%上乗せされた。

ホンダ・オデッセイ
ホンダ・オデッセイ

初代セレナFXリミテッドは、1994年の時点で226万3000円であった。

今の売れ筋グレードになる標準ボディのXVは273万6800円だから、現行型の価格は約20%値上げされた。

初代オデッセイのSは、205万5000円であった。

現行型は最も安価なアブソルートの8人乗りが349万5000円だから、価格は70%も高まっている。

1994年に販売されていた初代RAV4は、直列4気筒2Lエンジンを搭載するコンパクトなSUVで、価格は189万8000円であった。

現行型もノーマルエンジンは2Lだが、ボディは大幅に拡大されて3ナンバー車になり、最も安いXの価格は274万3000円だ。比率に換算すると45%値上げされた。

レガシィツーリングは、1994年には2代目が売られていた。

2000GTの価格は286万6000円だ。この後継車種とされるレヴォーグは、価格が最も安いGTならば310万2000円だ。値上げ幅は8%に収まっている。

このように車種によって違いはあるが、売れ筋のワゴンRやセレナで、販売の主力になるグレードの価格は約20%の上乗せだ。

27年前の1.2倍に増えている。

その一方で平均所得は20%少々減ったから「所得は上がらないのに、クルマは値上げされている」となるわけだ。ネットの書き込みを裏付けた。

なお値上げされた背景には、消費増税もある。

1994年頃の消費税率は3%で、しかも価格には含まれなかった。

今は10%の消費税を含めて価格を表示しているから、ますます割高になってしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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