新型スバルWRX S4 全4グレードで登場 試乗で感じたWRX STIへの道のり 

公開 : 2021.11.25 08:05

プラットフォームは第1期熟成完了

では、今回の袖ケ浦フォレストレースでの実車走行体験から、今後登場する新型WRX STIの走り味を予想してみたい。

まずは、クルマとしての資質についての感想だ。

スバルWRX
スバルWRX    スバル

スバルファン/WRXファンならば想像がつくように、やはりスバルグローバルプラットフォーム(SGP)の効果が絶大だった。

エンジンや変速機が進化し、タイヤを新設計したとしても、土台(車体)がしっかりしないとクルマとしての収まり(バランス)を高次元で実現することはできないのは当然のことだ。

一般的に、クルマの車体の基本設計は10年以上の長きに渡り継承されるもので、スバルにとってSGPはスバル史上でも極めて大きな転換期となった。

インプレッサ、XV、フォレスター、アウトバック(北米仕様)、そして「ほぼ日本市場向け商品」である2代目レヴォーグと、SGPはインナーフレーム構造採用などで段階的に進化し、WRX(S4)ではSGP第1期としての熟成が完了したといえる。

またパワートレインついても、FA24での2.4L化という視点だけではなく、WRX S4、およびレヴォーグのプロジェクトゼネラルマネージャーである五島賢(ごしまさとし)氏がいう「CVT(リニアトロニック)の逆襲」によって、新型WRX STIに向けたハイパフォーマンス化の幅が大きく広がったと感じる。

新型WRX STI登場はいつ?

WRX STI(日本仕様)の歴史はEJ20の進化と同義である。

一方、2000年代中盤以降に北米上陸したWRX STIは、フリーウエイでの高速巡航や日常生活での使い勝手などから、日本に比べてエンジン排気量の大型化が必然となった。

先代の「S209」ではEJ25が採用された
先代の「S209」ではEJ25が採用された

直近では、STIコンプリートカー「S209」でEJ25を採用している。

現時点では新型WRX STIが搭載するパワートレインの詳細についてスバルは明らかにしていないが、今回試乗したWRX S4 STIスポーツR搭載のFA24+リニアトロニックには、新型WRX STI用ユニットに向けた「余力」が十分にあると感じた。

ドライブモードS#で変速時に演出されている音や振動についても、新型WRX STIとの差別化を踏まえて「抑え気味ではないか?」とも感じた。

S#での走り全体として「そこまでの思い切ったセッティングにするのかという議論があった」(五島PGM)というほど、日本ではS4と呼ぶWRXのベースモデルのハイスペック仕様(STIスポーツR)の「落としどころ」に苦心したといえるだろう。

裏を返せば、S#によって「さらに上(=WRX STI)を目指したくなる」という気持ちになる人が多いのかもしれない。

ユーザーに対する「心の導火線に火をつける」(五島PGMの常套句)という商品戦略が見て取れる。

残念ながら今回、新型WRX STI発売時期を聞き出すことはできなかったため、スバルからの正式発表を待ちたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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