BMW M4 vs メルセデス・ベンツC63 AMG 507 クーペ

公開 : 2014.05.20 23:50  更新 : 2021.01.30 21:38

5世代目のM4が、M社の素晴らしいモデル群の一員として認められるためには、先代からの進化は必須事項だと言えるだろう。加えて、強力なライバルであるC63 AMGと比較してみることもまた必須なのではないだろうか。

M4とC63のエンジンとでは、排気量からしてまるで違うものであるのは紛れもない事実だけれど、M社、あるいはAMGというハイパフォーマンス・メーカーによるチューニングが施されているという点においては、ひとつ比べる価値があるはずだ。

£56,635(839万円)のM4が£57,000(844万円)のC63に対してどれほどのパフォーマンスを発揮するのかを調べる前に、M4と基本骨格を同じくするM3との間にどれほどの差があるのか、また数値上のポテンシャルはC63のそれと比べてどれくらいの立ち位置にあるのかの2点をおさらいすることにしよう。

■最新のM3 vs M4

F60 M4のメカニカルな構造は、時を同じくしてデビューした4ドアのM3と瓜二つだ。新たなエンジンに、新たなシャシー、新たなギアボックスに新たなブレーキ。Mを冠するモデルの中でも魅力に富む新時代の車と呼ぶに相応しい。

特筆すべきはその車重。CFRP(カーボンファイバー強化プラスティック)をはじめとする、軽量素材をふんだんに用いた結果、先代比-80kgもの軽量化に成功した。したがって、その結果は操舵に対する反応やゼロスタート時のパフォーマンス向上に大きく貢献したのである。

進化はそれだけではない。直列6気筒ツインターボ・エンジンは427psであったV8エンジンよりも僅かながらにアップした431psを発揮するのだ。また、先代の40.8kg-mに対して劇的に向上した56.1kg-mものトルクを1850-5500rpmで発生するため、車重の減量を考慮するとあなたの想像以上のパワーウエイトレシオまたはトルクウェイトレシオを叩き出す結果となるのだ。

新開発されたエンジンを始めとする、ステアリングにブレーキ、サスペンションはどれも先代を凌ぐ出来映えになっている。リアのサブ・フレームはボディに強固にマウントされ、重要な構成要素にはスチールが用いられるが、フロントのアルミニウム製のサブ・フレームはフル・カーボンファイバー製のストラット・タワーバーにて補強される。

先代同様、フロントがマクファーソン・ストラット、リアがマルチリンクというサスペンション構成になるが、細かな設計は再度見直しが図られている。

パワー・ステアリングも同様に電動アシストであるものの、Mを冠するモデルに相応しいフィーリングと正確性を優先して注意深く設計したとBMWは説明する。ステアリングのマナーは3つのモードから選択可能で、仮にアダプティブMサスペンションをオプション選択した場合、ダンパーの設定も同様に調整可能となる。

サスペンションとステアリングの2大要素のレスポンスと重量感を3段階(コンフォート、スポーツ、スポーツ・プラス)から選択することによって、よりシャープな仕立てにすることも可能となったのだ。

現実的な話、もしあなたがM4をオーダーすることになると、見積書には以下の項目が並ぶはずだ。コーナリング時に左右の駆動輪の間に生じるトルク差を解消するためのアクティブMディファレンシャル(標準装備)、カーボンセラミック・ブレーキ(89万円のオプション)とミシュラン・パイロット・スーパー・スポーツ(標準装備は18インチ、テスト車両はオプションの19インチ)だ。

加えて先代のV8エンジンに比べるとトルクは40%向上したにもかかわらずCO2排出量は194g/kmに抑えられ、少なくとも25%経済性が増したというのだからこれらもまた特筆すべき点であろう。

■2台のバトルは

M4の詳細情報はここまでにして、いよいよC63 AMG 507とどんなバトルを繰り広げるか見ていくことにする。原則的にはBMWのほうがAMGに比べて148万円安いはずだが、テストした車両はオプションのカーボン・セラミック・ブレーキに、デュアル・クラッチ・ギアボックス、またインテリアにいくつかのオプションを追加したため、あっという間にAMGと同価格帯になった。

事実、C63にはスチール製のブレーキが装着されている上、M4に比べると200kgのハンデを負っている。ただしBMWの431psに対して507psもの出力を発揮し、愛おしくなるほどの後輪駆動シャシーと満足できるサイズのトランク容量と4つの座席を備えているのだから、むしろM4の方にハンデがあるといっても良いくらいだ。

しかしながら、それにもかかわらず、BMWはあくまで平然としているように感じ取れる。なぜならM4のキャビンはC63のそれに比べてモダンで直感的、ドライビングに焦点を当てた仕立てになっている上、ドライビング・ポジションは完璧の域に達しているからだ。それだけではない、後部座席の空間もC63に比べて広いし、直列6気筒ツイン・ターボ・エンジンは一度火を入れると即座にポテンシャルが炸裂する。最も重要なことではあるが中間速度での安定感はC63より優れている上、乗り心地もC63より快適ときたら、もしかするとM4はC63を簡単に打ち負かすのではないのだろうかと思ったほどだ。

オプションのM DCTギアボックスをいざ1速にシフトしてアクセルを踏み込む。乗り心地は引き締まっているものの、あくまでドライバーに従順だ。またステアリングはコシがあるけれど正確。バケット形状のシートのサポートは良好で、ターボ・エンジンであるにも関わらずスロットル・レスポンスは機敏である。

アイドリングより少し上の回転数からトルクが湧き出し、例えるならばしばらくの間餌を与えられなかった犬のように、車自らが加速することを熱烈に、そして荒々しく求めている。さらに2000rpmより上の回転数からは怒涛の勢いで加速していくのである。

実際の所、賢いESPシステムのお陰で1速あるいは2速では56.1kg-mという強大なトルクを肌で感じることはない。ただし仮に、アクセルを踏み込めば瞬時にESPの介入を知らせるランプは点滅し続けることになる。しかもこれは乾いた路面での話である。

3速以上ではトルク制限から完全に解き放される。M4は全ての電子制御から完全に解放され、狂おしいほどの加速が始まり、これを体験する誰もが新たなエンジンが一体どれほどの潜在能力を持っているのか胸を高鳴らせるに違いない。アウトバーンならまだしも、英国内では免許証が何枚あっても足りないだろう。

ただしひとつ、あまり好意的になれない部分があるのも事実だ。2000-7000rpmにおけるトルクの伝達に鋭さのようなものが今ひとつ足りないのである。感覚としては高回転型のガソリン・エンジンというよりもむしろターボ・ディーゼル車に近く、回転数に比例してトルク供給も盛り上がっていくというような実感はない。

確かにエグゾースト・サウンドそのものは素晴らしい。ただし残念なことに2500rpmよりも7000rpmの方が盛り上がるといったわけではなく、2500rpmも7000rpmも ”同様の” 音がするのだ。1986年から続く歴代のM3に比べると今回のエンジンは飛躍的に効率的で賢くなったけれど、それと引き換えに ”忘れられない” 音であるかどうかと問われれば、首を縦に振ることは難しい。あの心の底から感動がこみ上げてくるようなサウンドはもう耳にすることは出来ない。

中にはそんなことは気にならないという向きもあるだろう。しかしながら、エグゾースト・ノートにこそ期待する人たちにとっては、官能的な音を耳にすることが出来ないということはつまり、M3あるいはM4の魅力が大きく色褪せてしまうことをも意味するのだ。対してC63はどうだろう。たしかにM4のターボ特有なパンチ感はないものの、最後の2000rpm前後の力強さは段違いである。そして古典的のV8サウンドといったら、まさに陶酔モノだ。

3000-6500rpmでの一般的な回転数ではM4と同等の力強さといったところだ。ただし5000-5500rpmのパワーバンドに達した際はAMGの方がより力強くなる。0-100km/h加速時のタイムはM4が4.1秒、そしてC63が4.2秒である。たかが0.1秒の差しかないものの、C63から発するサウンドを耳にしながら達する4.2秒と、そうでない4.1秒では、明らかにC63の方が速く活気があるものに感じるのである。

そうは言っても、BMWのデュアル・クラッチ・ギアボックスはAMGのオートマティックに比べて正確な仕事をすることは確かだ。したがってマニュアル・シフト時ではシフトアップ、シフトダウンともにBMWの方が素早い。しかしながら、オートモードの際は両者ともにマナーの違いはほとんどなく動作は非常に優れる。荒れた路面での乗り心地もいくぶんBMWの方がスムーズで、タイヤノイズも小さい。ただしステアリングの絶妙な塩梅はAMGに一歩譲り、AMGの愛おしき操舵感覚はまだまだBMWが見習うべきところでもある。

むろん、BMWのステアリングの味付けもほとんど完璧だと言えるけれど、メルセデスの持つとろりとした滑らかなタッチにやはり軍配が上がる。各モードを選択した際のフィーリングの変化はBMWの方がわかりやすいかもしれないが、メルセデスのそれはどのモードでも一貫して知的なフィールを持ち、全てのコーナーでそれを感じることができるだろう。あなたの鼓動は僅かながらに打つスピードを速め、アルカンターラを掴む指先から脳へと甘美なニュアンスを伝えてくれるはずだ。

ハンドリング・バランスは両者横並びではあるが、加速度を加えた操舵を行った際にはAMGの方がほんの僅かに重量感を持っている。一方M4の場合は、コーナーへ向けてステアリングを適切な方向に回す際、より俊敏で慣性力が少ない印象を与えた。またコーナーに入りきった後では、リア・アクスルからの情報量がより多く感じられた。ただし、限界点ではAMGの方がより熱狂的で、恐ろしいほど落ち着き払っていた。

両者ともに、横向きに滑らせながらコーナリングした際には圧倒的な包容力はあり破綻する素振りはまったくみせなかった。BMWのアクティブ M ディファレンシャルは芸術的なドリフトを、C63で行うのと同じように可能にしてくれるのである。

■勝敗はいかに?

M4なのか。それとも強力なライバルであるC63なのか。いよいよ決着を付けねばなるまい。

正直に言おう。M4はあらゆる面において ”優等生” である。ただし、いくつかの重要なレスポンスにおいては、あまりにもデジタルすぎるのだ。とくに、古典的で野蛮な王者であるC63を目の前にすると、なおさらそう感じずにはいられない。

M4を振り返ってみると、非常に感動的で言うなれば現代におけるモダン・マシンの象徴だ。ガソリン・エンジンを使用しているにも関わらず、高い経済性と競争力のある価格を掲げる。その上、怪物のようなパフォーマンスを発揮し、ハンドリングにしても多くのドライバーが虜になるだろう。

ただし、これまた残酷な話ではあるが完璧であるがゆえにハマってしまう落とし穴だってあるのだ。もしあなたがコーナリング中に何らかの失敗を犯したとしよう。M4ならば優しく手を取り、あなたを元あるべき場所まで再び導いてくれるはずだ。そこで古典的ファイターのC63ならどうするだろう。あなたを救ってくれるだろうか。

答えは「ノー」だ。

しかしながら、そんな惨忍なところこそが、ハイ・パフォーマンスカーに求められるハードな刺激で、結果的にそこに惚れ込んでしまうことだってあるのだ。

また見方を変えると、M4のように運動性能と経済性の両側面で一流なモデルが発表されたというのも事実なのだ。そう考えると、私に言わせてみれば、この車の属するカテゴリーの未来は明るい。

(スティーブ・サトクリフ)

BMW M4

価格 £56,635(972万円)
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 4.1秒
燃費 12.0km/ℓ
CO2排出量 194g/km
乾燥重量 1537kg
エンジン 直列6気筒2979ccターボ
最高出力 430ps/5500-7300rpm
最大トルク 56.0kg-m/1850-5500rpm
ギアボックス 6速マニュアル

メルセデス・ベンツC63 AMG 507 クーペ

価格 £67,270(1,143万円)
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 4.1秒
燃費 8.4km/ℓ
CO2排出量 280g/km
乾燥重量 1730kg
エンジン V型8気筒6208cc
最高出力 507ps/6800rpm
最大トルク 62.2kg-m/5200rpm
ギアボックス 7速デュアル・クラッチ

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