ランドローバー・レンジローバー CSK キングへ捧ぐ200台限定 最速の3ドア 後編

公開 : 2022.01.08 07:06

明確にボディロールが少ない

最初期の頃のクラシック・レンジローバーは、運転が楽しい。だが、高速道路を用いたような長距離旅行は、本来の設計意図にはなかった。オーバードライブへシフトアップできるチャンスがあったとしても。

1970年代のモデルと比べて50馬力ほどパワーアップしたCSKは、遥かにたくましい。加えてロードノイズは低く、風切り音やトランスミッションのうなりなども静か。1990年代に、高い評価を得られたことを理解できる。

ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)

運転席からの眺めに、CSKだからという違いはない。しかし速めの速度でコーナーへ侵入すると、硬めのサスペンションとアンチロールバーのおかげで、明確にボディロールが少ない。

同乗者や対向車を不安がらせることなく、積極的に運転できる。外から眺めていると大きくボディが傾いているように思えるが、乗っているとそうは感じない。正確にレンジローバーを操れる。

ブレーキペダルは軽く踏め、制動力はABS付きで強力。シフトレバーのストロークは、乗用車のように短い。古い4速MTの、商用車のような質感とは大きな違いだ。素晴らしいレストアが施された今回のCSKは、新車時以上に楽しい。

マニアの間では特にスペシャルな1台

3ドアのレンジローバー・クラシックに対する注目は、近年高まる一方。このCSKのレストアを手掛けたホランドは、現代的なチューニングを施すメニューをいくつか用意して、需要に応えている。

レンジローバーの構造は比較的シンプルで、レストアしやすいと考えられているが、実際は異なるとホランドが話す。「通常のレンジローバーでも、かなり面倒です。サンルーフや集中ドアロックなどを装備したCSKの場合、一層複雑になります」

オーナーのピーター・ヴァンデル・ウォルト氏(左)と、レストアを手掛けたフィル・ホランド氏(右)
オーナーのピーター・ヴァンデル・ウォルト氏(左)と、レストアを手掛けたフィル・ホランド氏(右)

部品の入手も難しいそうだ。「大抵の場合は、新品として扱われる部品は新しくありません。長期間箱にしまわれていた年代物です。レストアには、専用の道具を準備する必要もあります」

「中古部品は、一般的な中古車なら問題なく使えるでしょう。でも、10万ポンド(約1520万円)のレストア車に使うわけにはいきません」

新車時のレンジローバー CSKの価格は3万ポンド。ベージュ・レザーにベルーガ・ブラックという色の組合せ以外、基本的に選択肢はなかったという。5ドアのハイスペック・モデルへ人気が集まっていた時代、200台限定でも販売は簡単ではなかった。

しかし現在は、3ドアのレンジローバー・クラシックとして最も希少で速いCSKは、マニアの間では特にスペシャルな1台と化している。たとえ15万ポンド(約2280万円)の値札が付いていても、すぐに温かいガレージが見つかるのだろう。

ランドローバー・レンジローバー CSKのスペック(1991年/英国仕様)

英国価格:2万8995ポンド(新車時)/15万ポンド(約2280万円)以下(現在)
生産台数:200台
全長:4470mm
全幅:1778mm
全高:1778mm
最高速度:183km/h
0-97km/h加速:9.5秒
燃費:5.3-7.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:2012kg
パワートレイン:V型8気筒3947cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:187ps/4750rpm
最大トルク:32.4kg-m/2600rpm
ギアボックス:5速マニュアル/4速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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