ランドローバー・レンジローバー CSK キングへ捧ぐ200台限定 最速の3ドア 前編

公開 : 2022.01.08 07:05

初代レンジローバーの末期、200台限定の特別な3ドアが存在しました。英国編集部が極上の1台をご紹介します。

レンジローバー生みの親のイニシャル

特別という言葉が普遍的な表現に聞こえる最近は、スペシャル・エディションとバッジが貼られたクルマにも、さほど特別感はないように思う。オプションが満載されていても。

その理由は、競合メーカーなどの新モデルに対し、既存モデルへの注目を喚起させるマーケティング手法として「スペシャル」という言葉が頻用されてきたからだろう。モデル末期を迎えたレンジローバー・クラシックでも展開されたように。

ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)

1991年、3ドアの初期型レンジローバーに、200台限定のスペシャル・エディション、CSKが設定された。ただし、1960年代後半にレンジローバーを開発した技術者のイニシャルへ、ふさわしい内容が与えられていた。

V8エンジンと四輪駆動を搭載する、レジャー用ステーションワゴンというコンセプトを発案した、チャールズ・スペンサー・キング(スペン・キング/CSK)氏。1970年以来、25万台もの生産数で多くのファンを獲得してきた、レンジローバーの生みの親だ。

行く先を選ばない、四輪駆動の高級ステーションワゴンというクルマは、北米以外では当時は不在。ラグジュアリー・オフローダーという、新市場を開拓した。開発したスペン・キングでさえ、これほど支持を得るとは想像できなかったはず。

高度な設計とデザイン、実用性と高級感、悪路性能という融合は、他に例のないものだった。レンジローバーの歴史的な重要性は、いうまでもないだろう。

3ドアはオリジナルに対する敬意の表れ

発売間もない頃は、ランドローバー社はブリティッシュ・レイランド傘下にあり、大きな需要へ充分に応えられる態勢にはなかった。1980年代に入ってもレンジローバーの人気は衰えず、ランドローバー社として独立。その後の長寿命化を支えた。

当初は3ドアのみの設定だったが、1981年に5ドア版が追加。すぐに主力のレンジローバーの座を掴んだ。その人気に押され、3ドア・レンジローバーの英国での販売は、1984年にそっと終了を迎えている。

ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)

しかし1991年、ランドローバー社は3ドアのレンジローバーを一時的に復活させ、CSKを発売。理解のあるコレクターだけがその価値に気付き、オーダーを入れた。

1981年のヴォーグなど、3ドアのレンジローバーには限定仕様が何度か登場していた。だが、CSKは本当に特別。泥汚れに不向きな内装や、専用塗装以上のものが与えれられていた。

3ドアのボディは、1970年のオリジナル・レンジローバーに対する敬意の表れ。余っていたボディシェルを使い切ることが目的ではない。実際、一部の市場向けに3ドアの生産は続けられていた。

このCSKと通常の3ドア版の決定的な違いは、ボディの固定方法。ボルトではなく、5ドア版と同様に溶接でシェルに固定されている。

さらに、ランドローバー社が新開発したサスペンションも一足先に採用。レンジローバーとして初めて前後にアンチロールバーを搭載し、ドライバーが積極的にコーナーへ侵入しても、過大なボディロールの発生を抑えた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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