ランドローバー・レンジローバー CSK キングへ捧ぐ200台限定 最速の3ドア 後編

公開 : 2022.01.08 07:06

初代レンジローバーの末期、200台限定の特別な3ドアが存在しました。英国編集部が極上の1台をご紹介します。

1000時間を費やしボルト1本まで再生

クラシックカー・ディーラーを営むピーター・ヴァンデル・ウォルト氏のレンジローバー CSKは、英国の納屋で発見された。2003年から眠った状態だったものを、2018年にウォルトが発見したという。

「最初に詳しく見た時は落胆しました。酷く錆びていて、高すぎる金額だったと後悔したほど。レンジローバーのカスタマイズを手掛ける、オーバーフィンチ社によるクルマだと気付き、少し興奮していたんですよ」。とウォルトが振り返る。

ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)

彼は南アフリカでも、別のCSKを2台購入している。ホワイトの1台は、ラグジュアリー・グッズの販売業を営む女性へ売ったという。夫へのクリスマスプレゼントとして。

今回ご登場いただいたブラックのCSKは、シリアルナンバーが142。オーバーフィンチ社によって手が加えられた2台のうちの1台で、残る1台は現存していないようだ。

英国中部、バーミンガムの南のレディッチという街に拠点を構える、トゥエンティ・テン・エンジニアリング社によってレストアを受けたばかり。代表のフィル・ホランド氏のチームにより、2年間、1000時間を費やしてボルト1本まできれいに再生されている。

作業は、COVID-19の流行に伴う部品供給の問題で難航。加えて、ワークショップから出火し、レンジローバー数台と貴重なスペアパーツが焼けてしまう、災難にも見舞われたという。

質実的な雰囲気とはかけ離れた豪奢さ

「父は、自分が生まれる前に3ドアのレンジローバー・クラシックを購入。1995年、自分が就職した時に住んだ街から10kmも離れていない場所で、初代レンジローバーはまだ製造されていました」。と、レンジローバーとの古い関わりをホランドが説明する。

オリジナルのCSKに対しオーバーフィンチ社が加えた変更は、マフラーに一層引き締められたサスペンション、標準よりワイドなエイボン社製のタイヤなど。同社は5.7Lのシボレー社製V8に換装する手法で有名だったが、エンジンはCSKのままだという。

ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー CSK(1991年/英国仕様)

ローバー社製のV8は、レディッチの街から東へ離れたラターワースに構える、JEディベロップメント社によってリビルドされた。新車時より状態が良いほど。1991年に筆者はCSKの広報用車両に乗った記憶があるが、間違いなく好調だ。

ドアを開くと、豪華なカーペットが敷かれた車内から、芳醇なレザーの香りが漂ってくる。初期の頃の、質実的な雰囲気とはかけ離れた豪奢さを感じる。

傷んでいたレザーは、ホランドのワークショップの隣にあるネイションワイド・トリム社によって、丁寧に蘇った。プラスティッキーだったダッシュボードも、より高級感のある見た目に仕立て直されている。

リアシート側は、3名掛けの彫りの深いベンチシート。分割して折りたためる。荷室空間は、さほど広くはならないけれど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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