ウーリン・ホングアン・ミニEVへ試乗 51万円のマイクロ純EV 価格以上の完成度

公開 : 2021.12.27 19:05

80km/hでもさほど不安に感じない

運転席に座ると、幾つかの問題に気付く。座面が不自然に高く調整できない。+と−のマークが記されたペダルは、中央側にだいぶオフセットしている。

その理由は、マクファーソンストラット式のフロントサスペンションが、車内空間を侵食しているから。着座位置は我慢できないものではないが、ペダルは1時間も運転すれば脚が疲れてしまう。

ウーリン・ホングアン・ミニEV(中国仕様)
ウーリン・ホングアン・ミニEV(中国仕様)

ステアリングホイールの感触は曖昧。50km/hほどでコーナリングすると、慣性や遠心力とボディが戦っていることが伝わってくる。そのかわり2mを切るホイールベースのおかげで、驚くほど小回りが効く。

車重は約700kgだというが、タイヤが小さく路面の影響を受けやすい。マカロン仕様として、スポーツとエコというドライブモードが追加されているが、乗り心地は不変だ。

スポーツ・モードにするとアクセルペダルの反応が良くなり、回生ブレーキの効きが見違えて良くなる。ただし、ワンペダルドライブできるほどではない。

ホングアン・ミニEVの最高速度は99km/hだという。高速道路を走らせてみたところ、80km/hを少し超えるスピードへ到達できた。意外にも、不安感はさほど強くなかった。

安全性は万全とはいえない。ボディはスチール製で、アンチロック・ブレーキが付いている。マカロン仕様の場合、運転席側にエアバックが付く。チャイルドシート用のISOFIXアンカーも付く。その程度だ。

駆動用バッテリーの容量は、9.3kWhか13.8kWhが選べる。充電速度は遅く、13.8kWhのバッテリーで9時間ほど掛かるという。

低価格が信じられないほどの仕上がり

もちろん、価格が10倍前後は違う欧州の純EVと比べれば、ホングアン・ミニEVは至らないことだらけ。しかし現在の中国では、多くの人に最初のマイカーとして選ばれる存在。自転車に複数人がまたがって移動するより、安全で快適なことは間違いない。

中国での純EVの販売台数は、ここ10年で急激に伸びている。その多くは、これまでフードデリバリーやライドシェアといったサービスの需要が支えてきた。だが、2020年頃から個人ユーザーへシフトが始まっている。

ウーリン・ホングアン・ミニEV(中国仕様)
ウーリン・ホングアン・ミニEV(中国仕様)

技術進歩でバッテリー価格が低下しており、市場は間違いなく伸び続けている。中国の大都市部では環境汚染対策として、通行できるナンバープレートに制限が掛けられているが、純EVは免除となることも大きいだろう。

ホングアン・ミニEVは、中国で毎月3万台ほどがコンスタントに売れている。他ブランドも含めて、この手のマイクロカーは純EV全体のシェアの40%以上を占めているという。ホングアン・ミニEVの成功で、競合モデルが多く生まれた。

ダチア・サンデロの方が、比較にならないほど優れていることは間違いない。だが、3400ポンド(約51万円)という低価格が信じられないほど、ウーリン・ホングアン・ミニEVの仕上がりが良いことも、確かではある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・アンドリュース

    Mark Andrews

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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