ジャガーCタイプのレプリカ エキュリー・エコッスLM-Cへ試乗 4.2L直6で304ps

公開 : 2022.02.08 08:25

往年のレーシングチーム名を冠したメーカーから、Cタイプのレプリカが誕生。英国編集部が一般道で試乗しました。

オリジナルよりひと回り大きいLM-C

英国人作家、ジョージ・オーウェルが残した名言に「過去を支配できる者は、未来も支配できる」というものがある。らしくない始まりだが、クルマにも当てはまりそうだと思わされた。

今回ご紹介するエキュリー・エコッスLM-Cは、見た目はそっくりだが、ジャガーCタイプではない。手掛けたのは、英国の名門レーシングチームの名前を冠した、エキュリー・エコッス社だ。

エキュリー・エコッスLM-C(英国仕様)
エキュリー・エコッスLM-C(英国仕様)

オリジナルのCタイプは、1953年のル・マン24時間レースで優勝を果たした。ジャガーは2022年に、そのコンティニュエーション・モデル、ほぼ完璧な復刻版を16台作ると発表している。そのクルマとは、まったくの別物。

ジャガーはCタイプのレプリカを制作した別の会社を、著作権の侵害で訴えた過去がある。だが、エキュリー・エコッス社とは良好な関係にあるようだ。その仕上がりを確かめれば、うなずける判断だといえるだろう。

一見すると、本物のCタイプと殆ど見分けがつかない。当時の写真と見比べても。だが実際は、LM-Cはひと回り大きいという。

エキュリー・エコッス社のクリス・ランドール氏によれば、実物より100mm長く、50mm幅が広いそうだ。プロポーションが瓜二つだから、説明されてもわかりにくい。

同社が寸法を大きくした理由は、クルマの目的がオリジナルと異なるため。Cタイプは生粋のレーシングカーだったが、LM-Cは公道走行が前提。そのおかげで、本来は居心地が悪いほどタイトな車内も、LM-Cでは大幅に改善されている。

ジャガーの4.2L直列6気筒で304ps

実際のオーナーは、筆者が試乗したような天気の日に、LM-Cへは乗らないだろう。写真では英国北部、スコットランドの晴れた風光明媚な自然が写っている。だがロンドンの北西、オックスフォードシャー郊外の道でのドライブとなった。雨がちの寒い日に。

少し大げさなレーシングヘルメットをかぶり、ゴーグルを着ける。雨風をしのいでくれるのは、切りっぱなしの小さな強化ガラスと、更に小さなディフレクターくらいだ。

エキュリー・エコッスLM-C(英国仕様)
エキュリー・エコッスLM-C(英国仕様)

見た目はCタイプに酷似するLM-Cだが、その内側は多くが異なる。シャシーはオリジナルを模したスチール製の鋼管フレームで、アルミニウム製のボディが被さっている。しかし各所が強化され、サスペンションの支持ポイントにも変更が加えられている。

エンジンは、本物と同じくジャガーXK用の直列6気筒エンジンが載る。しかし排気量は3.4Lではなく、4.2Lへ拡大されている。英国でナンバー取得が可能なように、燃料インジェクションや排出ガスの制御システムが、しっかり搭載されている。

最高出力は304ps。トランスミッションはトレメク社製の5速マニュアルで、リアタイヤを駆動する。車重は1000kg丁度ということだから、パワーウエイトレシオはかなりのものだ。

タイヤは幅185という細身のエイボン。冷たく濡れたアスファルトで、そのパワーを操るのだから、一筋縄ではいかない。電子的なセーフティネットも備わらない。初心者への敷居は高い。

アイドリングするエンジンは、荒々しいノイズを放つ。脈打つように回転数が上下し、時々著しく低くなる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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