シトロエン2CV + ルノー4 世界で愛されたフランスの大衆車 上級志向の2台 後編

公開 : 2022.03.12 07:06  更新 : 2023.04.17 11:46

1日中120km/hで走っても問題なし

インテリアには、不思議と2CVと通じる雰囲気がある。大きな荷室の奥のリアハッチが、空間的な感覚を違わせるが、同じターゲット層に向けて開発された類似性が香る。ダッシュボードに取り付けられたシフトレバーも、なぜか一致している。

デラホイは、クラッチの感触を直したいと指摘するが、2CV AZAMと比較すれば動きはスムーズで、何度も踏みたいと思える。過去にキャトルを運転した経験があれば、タコメーターを勢いよく回すエンジンに驚くだろう。

ルノー4L(1961〜1992年/英国仕様)
ルノー4L(1961〜1992年/英国仕様)

ルノー5 ゴルディーニのエンジンは、かなり高度なチューニングを受けています。カムに乗る感じです。高回転が好きで、回さないと不機嫌になるほど」。とデラホイが笑う。

巧妙にモディファイされたキャトルは、活発に走る。意欲的なエンジンが、現代でも充分に乗れる移動手段へと生まれ変わらせている。急な登り坂でも、せわしない都市部でも、慌てる必要はない。

彼は、フルノーマルのキャトル 850も所有している。「もしどちらを選ぶかと聞かれれば、ノーマルの850を選ぶでしょうね。でも、フランスへの旅行などは難しい」

「英国南部から出るフェリーに載せれば、朝の8時にフランスの高速道路へ合流できます。BMWアウディが飛ばすなかで、80km/hで走るなんて自殺行為ですからね」

「一方でこのキャトルなら、1日中120km/hで走っても問題ありません。毎日でも。遥かに乗りやすいクルマです」

ノスタルジアを蘇らせてくれる2台

AZAM6とはいえ、ほぼオリジナル状態の2CVと、ホットにレストアされたルノー・キャトルとでは、動的能力で比較にならない。かといって、当時は2CVが完全に時代遅れなわけでもなかった。

筆者にとって、この2台でより魅力的に映るのはシトロエンの方だ。欧州の人々にとっては、記憶の奥深くに残るノスタルジアを蘇らせてくれるモデルでもある。だが同時に、少し実務的で現代的なキャトルにも、同じような愛情を抱かずにはいられない。

シトロエン2CV AZAM6(1965〜1967年/欧州仕様)
シトロエン2CV AZAM6(1965〜1967年/欧州仕様)

ルノー4は、間違いなく2CVより優れている。それでも、1990年代初頭までお互いに生産が続けられたという事実が、息の長い訴求力を物語っている。

フランスだけでなく、アジアや南アメリカでも、2台は庶民の味方だった。合わせて130万台以上という生産台数は、簡単に導かれるものではないのだ。

シトロエン2CV AZAM6とルノー4L 2台のスペック 

シトロエン2CV AZAM6(1965〜1967年/欧州仕様)

英国価格:536ポンド(1962年時)/2万ポンド(約310万円)以下(現在)
生産台数:516万3893台(2CV総計)
全長:3830mm
全幅:1480mm
全高:1600mm
最高速度:104km/h
0-97km/h加速:30.0秒
燃費:14.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:585kg
パワートレイン:水平対向2気筒602cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:26ps/4750rpm
最大トルク:4.1kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

ルノー4L(1961〜1992年/英国仕様)

英国価格:616ポンド(1962年時)/1万ポンド(約155万円)以下(現在)
生産台数:813万5434台(4総計)
全長:3658mm
全幅:1480mm
全高:1524mm
最高速度:109km/h
0-97km/h加速:38.0秒
燃費:14.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:640kg
パワートレイン:直列4気筒845cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:30ps/4700rpm
最大トルク:5.9kg-m/2300rpm
ギアボックス:4速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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