キャデラック・カスティリアン・エステートワゴン 8.2L V8に5.9mのフルサイズ 前編

公開 : 2022.03.13 07:05

極めてレアなアメリカン・フルサイズワゴンの1台が、キャデラックに存在します。英国編集部が魅力に迫りました。

大きいことは美しいことだ

迫力のフロントグリルと、大胆なテールフィン。フルサイズ時代を謳歌していた往年のキャデラックは、正式にはステーションワゴンを生産しなかった。

ビュイックからオールズモービルまで、ゼネラルモーターズ(GM)が擁するブランドにはそれぞれ用意されていたが、キャデラックは例外。華やかなブランドイメージに、実用主義なワゴンボディは適さなかったのだろう。

キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン(1976年/北米仕様)
キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン(1976年/北米仕様)

オーナーのステータスを象徴する豪華さに、アメリカの自動車技術のすべてが注ぎ込まれた設計。スタイリングやドライブフィールが、期待を裏切ることはなかった。北米大陸での旅行を最も安楽にしてくれるクルマが、キャデラックだった。

巨大なボディには、1970年代には8.2Lという驚くほど大排気量のV型8気筒エンジンが搭載された。加速は太いトルクに任せ、トランスミッションは3速のみのオートマティック。乗り心地は枕のようにソフトで、操縦性も至って温和だ。

その時代のアメリカ車には、大きいことは美しいことだ、という言葉が通じた。1971年の10代目フリートウッドでは、全長が6mに迫るほど。

ひと回り小さい、といっても全長5.2mで排気量は5.7Lもあったが、欧州車に影響を受けたセビルも登場はしていた。だが、ドゥビルやカライスといった後輪駆動のフルサイズ・キャデラックは、迷うことなく巨大だった。

ステーションワゴンを選べなかった時代

その頃の典型的なオーナーは、ステーションワゴンが必要な時期を既に過ぎていた。家族旅行の荷物を詰め込んだり、子供を学校へ送り迎えするのではなく、キャリアでの成功を示す移動手段が必要だった。

キャディラックは、ゴルフバッグを詰め込んで、早朝にグリーンを目指すようなクルマだった。一線を退き、フロリダやパームスプリングスでの余生を楽しむクルマだった。大企業で長年の心労を乗り越えた自分への、ご褒美だったともいえる。

キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン(1976年/北米仕様)
キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン(1976年/北米仕様)

1970年から1973年にかけてキャデラックは好調で、多様なボディスタイルを提供していた。セダンにリムジン、クーペ、コンバーチブルまで幅広く選べたが、ステーションワゴンは選択肢に含まれなかった。

保守的ともいえたモデル展開は、まだ充分に機能していた。より巨大な荷室を望むなら、追加費用を用意して、特別なボディを製造するコーチビルダーを訪ねるしかなかった。

ただし、救急車や霊柩車、商用車など、キャデラックがステーションワゴンへコンバージョンされた例は少なくない。映画ゴーストバスターズにも、そんな1台が登場することは、読者もご存知だろう。決して、的はずれな希望ではなかったといえる。

今回ご紹介する、キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴンもそんな1台だ。1976年の価格は3万ドル。ベースとなったフリートウッド 60スペシャル・ブロアムの、2倍近い資金が必要だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

キャデラック・カスティリアン・エステートワゴン 8.2L V8に5.9mのフルサイズの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

キャデラックの人気画像