キャデラック・カスティリアン・エステートワゴン 8.2L V8に5.9mのフルサイズ 前編

公開 : 2022.03.13 07:05  更新 : 2022.08.08 07:14

8.2Lの巨大なV8を載せたラストイヤー

基本のスタイリングは、デザイナーのビル・ミッチェル氏が手掛けた、1971年式からの派生。とてもバランスが良い。

フリートウッドは毎年のようにフェイスリフトが施されており、1976年仕様には角張ったバンパーにバーの細かいフロントグリル、四角いヘッドライトなどが与えられている。いかにもキャデラックらしいルックスだ。

キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン(1976年/北米仕様)
キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン(1976年/北米仕様)

後輪駆動シャシーのホイールベースは133インチ(3378mm)で、サスペンションは4輪ともにコイルスプリング。リアはリジッドアクスルながら、4リンクを採用している。ブレーキは、フロントにベンチレーテッド・ディスクが採用された。

ボディは巨大で、車内もゆったり。当時製造されていた量産車で、最も肘周りの空間が大きいといわれたほど。

1976年は、キャデラックが正式にコンバーチブルを生産した最後の年でもある。1977年に向けてダウンサイジングを図っており、500cu.in、8.2Lという巨大なV8エンジンを搭載した、最後のモデルイヤーにもなった。

この8.2Lエンジンは、1970年の前輪駆動2ドアモデル、エルドラドへ搭載されていたもの。だが、強化された排出ガス規制に対応するため、1975年にブランドの全モデルへ登用された。

当初グロス値で約400psを発揮していたものの、規制へ合わせた結果、ネット値で約190psへ絞られていた。豪華なシートに分厚いカーペットが敷かれたデレガンス仕様では、車重は2540kgにも及んだ。

1976年の製造台数は11台のみ

カスティリアンの多くも、デレガンス仕様がベース。ボディを手掛けたのは、ジェームズ・クリブス氏とジャック・パトリック氏が1975年に創業した、トラディショナル・コーチワークス社だ。

彼らは、カリフォルニア州のカーディーラー、ウィルシャー・キャデラック社の従業員だった。クリブスはマネージャーに就いており、高級なキャデラックの高額なスペシャルモデルに興味を抱くであろう、富裕なセレブとも繋がりを持っていた。

キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン(1976年/北米仕様)
キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン(1976年/北米仕様)

2人は、腕利きとして知られていたカスタムビルダーのジーン・ウィンフィールド氏を招聘。技術と才能を持つ、コーチビルド・チームを構成した。

トラディショナル・コーチワークス社は、キャデラックからの承認も得ていた。カリフォルニア以外でも、正規ディーラーを通じてカスティリアンのオーダーが可能だった点が興味深い。

さらに彼らは、独自のパンフレットを制作。ステーションワゴンの他にも、前輪駆動のエルドラドをベースにしたクーペ・デロイというモデルや、フリートウッドがベースのピックアップトラック、ミラージュもラインナップした。

ピックアップトラックの国なだけあって、エルカミーノ風ボディのミラージュは、合計で200台以上が製造されている。しかしカスティリアンは遥かに少なく、1975年に40台、1976年には11台しか作られていないという。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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