360馬力のPHEVを獲得 DS 9 E-テンス 4×4 360 リボリ+へ試乗 快適性に焦点

公開 : 2022.03.13 08:25  更新 : 2022.08.08 07:14

カーブの続く道を流暢にこなすシャシー

E-テンス 360ではトレッドが広げられ、リアタイヤを駆動するモーターが追加されたことで、アンダーステア基調に抑え込まれていたハンドリングも改められている。これまでの9とは異なる。

スポーツ・モードを選択すると、アダプティブ・サスペンションがタイトに姿勢をコントロール。リアモーターが積極的に働くようにもなる。

DS 9 E-テンス 4x4 360 リボリ+(欧州仕様)
DS 9 E-テンス 4×4 360 リボリ+(欧州仕様)

ステアリングは軽くスローペースだから、一体感を持って操縦できるわけではない。それでも、シャシーはカーブの続く道を流暢にこなしてくれる。

ただし、システム総合で360psの最高出力とは裏腹に、パワートレインは落ち着いた駆け足程度の走りが、最も能力を発揮できる印象。額面通りのパワーを求めると、1.6Lのガソリンエンジンが全力を振り絞っている様子が伝わってくる。

運転席へ、張り詰めたノイズが響いてくるわけではない。それでも、心地良いサウンドというわけでもない。

8速ATも、積極的に運転していない限り、滑らかで丁寧に変速をこなす。しかし、ステアリングホイールにパドルが付いているものの、完全なマニュアル・モードは選べない。ドライバーの意思でギアを選択できるが、程なくしてAT自ら別のギアを選んでしまう。

タイトコーナーからパワーを掛けて勢いよく脱出しようという場面でも、AT任せでは適切な低いギアを選択するのに、少しの時間が必要。変速が終わった頃には、コーナーの出口を過ぎていた、ということもありそうだ。

高速クルージングや郊外の闊歩が得意分野

高速道路でのクルージングや、低速トルクで郊外をゆったり闊歩するような運転なら、E-テンス 360の能力を活かせる。キックダウンを求めない範囲で。シャープさを増したシャシーや、パワフルになったパワートレインの、頂上部には迫らない方が良い。

DS側は、あくまでもスポーツサルーンではなく、グランドツアラーだと説明している。DSパフォーマンス部門での最終仕上げを経ていても。

DS 9 E-テンス 4x4 360 リボリ+(欧州仕様)
DS 9 E-テンス 4×4 360 リボリ+(欧州仕様)

E-テンス 360よりパワーで劣る、E-テンス 250が2022年4月から英国へ上陸する予定。これまでのE-テンス 225と置き換わるように。これによって9は、前輪駆動と四輪駆動の新しい2グレード体制が整うことになる。

DS 9は、BMW 5シリーズメルセデス・ベンツEクラスとは別のブランドを望む人のための、パーソナル上級サルーンだ。独自性も強く、秀でたスポーティさと引き換えに、他にはない快適性へ焦点が向けられている。

パワフルなPHEVシステムが、その個性とぶつかるということはない。だが、E-テンス 360の高めの価格を、正当化するには少々もの足りないことも確かではある。訴求力としては、より手頃なE-テンス 250の方が上にも思える。

ドライバーとしての充足感は、確かに高められた。それでもE-テンス 360が、フラッグシップのDS 9の殻を破ったとまではいえないだろう。

DS 9 E-テンス 4×4 360 リボリ+(欧州仕様)のスペック

英国価格:5万7200ポンド(約886万円)
全長:4934mm
全幅:1932mm
全高:1460mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.6秒
燃費:62.5-90.9km/L
CO2排出量:41g/km
車両重量:1909kg
パワートレイン:直列4気筒1598ccターボチャージャー+ツイン電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:13.6kWh
最高出力:360ps/6000rpm(システム総合)
最大トルク:53.0kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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