BMW、次世代FCEV向け水素タンク技術「フラット・ストレージ」で生産効率化 航続距離約750kmへ

公開 : 2026.06.15 07:05

BMWは水素燃料電池車(FCEV)のパッケージング上の課題を解決し、『iX5』のFCEV版とBEV版を同一ラインで生産できるようにしました。室内空間を圧迫さず、また航続距離も約750kmへと向上しています。

BEVと同一ラインで生産可能に

BMWは、車載用水素の新しい貯蔵方式として「BMWハイドロジェン・フラット・ストレージ(BMW Hydrogen Flat Storage)」システムを発表し、燃料電池車(FCEV)の開発を一歩進めた。

このシステムはモジュール式で、BEVモデル『iX5』の車内において「Gen6」高電圧EVバッテリーと同じスペースに収まるため、大きな障壁を克服している。従来のタンクのように室内空間を圧迫することはなく、何よりも重要な点として、FCEVモデル『iX5ハイドロジェン』を他のパワートレインタイプと同じ生産ラインで生産できるようになる。

BMWハイドロジェン・フラット・ストレージ
BMWハイドロジェン・フラット・ストレージ    BMW

市販の『X5』は現在、ガソリン、ディーゼル、BEV(iX5)、プラグインハイブリッド(PHEV)、そして新たにFCEVの5種類のパワートレインに対応しており、BMWはこれを「テクノロジー・オープン・アプローチ」と呼んでいる。いずれも新しい集中制御ユニット「ハート・オブ・ジョイ」を共有し、駆動系、ブレーキ、走行ダイナミクスを1つのシステムで統合制御する。

700barの高圧水素タンク

BMWによると、iX5ハイドロジェンの電気モーターはBEVバージョンとまったく同じだという。ただし、大型バッテリーではなく、車載タンクに貯蔵された水素を利用して水素燃料電池スタックが電力を生成する。

小型の高電圧リチウムイオンバッテリーがバッファとなり、加速時の瞬間的なエネルギー供給を担い、減速時には回生ブレーキでエネルギーを蓄える。

BMW iX5ハイドロジェン(プロトタイプ)
BMW iX5ハイドロジェン(プロトタイプ)    BMW

ハイドロジェン・フラット・ストレージは、700barの高圧で水素を貯蔵し、iX5では約750kmの航続距離を実現する。開発初期のプロトタイプには、6kgの水素を貯蔵する2つのタンクが搭載され、航続距離は約500kmだった。

この水素貯蔵システムがBEVモデルのバッテリーと同じスペースに収まることから、既存のプラットフォーム上でFCEVを生産できる。FCEVの量産化と販売を現実的なものにする上で重要だ。

2028年より量産開始か

X5のプラットフォームは5種類のパワートレインに対応しているため、従来のFCEVのように特注生産に頼るのではなく、需要に合わせて生産規模を調整することが可能になるはずだ。これは、依然として世界的に限られている水素充填インフラの現状にも適しているだろう。

ハイドロジェン・フラット・ストレージは、7つのスリムなタンクで構成されている。各タンクは「タイプ4」と呼ばれる設計で、ポリマーライナーを炭素繊維強化複合材で包んだ構造となっている。

BMW iX5ハイドロジェン(プロトタイプ)
BMW iX5ハイドロジェン(プロトタイプ)    BMW

タンクは並列接続されており、合計7kgの水素を貯蔵でき、水素ステーションでの充填は5分以内で完了する。7つのタンクは金属フレームに統合され、個別に動作するのではなく、単一のメイン中央制御バルブによって制御される。

ハイドロジェン・フラット・ストレージは燃料電池パワートレイン全体の一部であり、その中核となるのは、FCEVのベテランであるトヨタと共同開発した最新の「Gen3」燃料電池システムだ。BMWによると、100台のiX5ハイドロジェンのプロトタイプからなる試験車両群は世界中で試験に成功しており、2028年には同社初の水素動力モデルとして量産を開始できる見込みだという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    役職:技術編集者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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