スマート・フォーツー・エクスクルーシブ・プロトタイプ

公開 : 2014.06.17 23:55  更新 : 2017.05.29 18:43

メルセデス・ベンツは、人気車種のスマート・フォーツーの第3世代となる新型についての情報を明かした。このコンパクトな全長2.69mのボディには根強いファンの愛とクルマの大きな未来が詰め込まれているといっても過言ではない。

3代目となるスマートはルノーとの新規協定の元、今回も変わらずフランス西部のハンバック工場で製造される。新型ルノー・トゥインゴが昨年の3月にジュネーブ・モーターショーで発表されたのは記憶に新しいが、新しいプラットフォームを持つ5ドアのスマート・フォーフォーも並行して先代トゥインゴが生産されていたルノーのスロベニア工場にて生産される。ルノー側は工場を提供することに加え3気筒の小型ガソリン・エンジンをスマート側へと供給する。スマート・フォーツーもフォーフォーも公式発表は7月中旬を予定しているが、我々は既にドイツのシュツットガルト近郊、ボブリンゲンにてスマート・フォーツーのプロトタイプを工場内のコースと一般道にて試乗する機会を得たのである。

以前よりスマートが搭載するセミATの変速に関しては、その変速スピード故に非難の対象となることも多かった。しかしここでビッグニュースが飛び込んでくる。何と3ペダルの5速マニュアル、若しくはゲトラグ社製の6速ツインクラッチが選択可能となったのだ。これは5ドアのフォーフォーにも追い風となる事は間違いないであろう。

その他に関して言えば、フォーツーの全幅が10cm拡大されることによりキャビンの居住性が向上する事も特筆すべきであろう。

フォーツーにおいて今回も引き継がれた点としては鋼鉄をシャシー・フレームの主な成分とし衝突エネルギー吸収構造を採っていることである。構成はとてもコンパクトな3気筒エンジンをギアボックスとセットで荷室の下に収めて後輪を駆動するリア・エンジン・レイアウトだ。

英国内で発売されるエントリー・モデルのエンジンはルノー製のSCe70と呼ばれる999ccの新型3気筒エンジンとなるであろう。自然吸気で72psと9.2kg-mのトルクを発生し、まさにシティ・コミューターにはピッタリなエンジンだ。

アイドリング・ストップ機能はオプションとなる見込みで、上位グレードとしては、同じくルノー製のTCe90と呼ばれる899ccの3気筒ターボエンジンで92psと14.0kg-mのトルクを発生させながら欧州排ガス規制であるユーロ6に適合する。このエンジンは既にルノー・キャプチャーとルノー・クリオに搭載されているが、スマート専用に改良を行っているのだとルノーがは発表している。

これらのモデルは4輪独立懸架式のサスペンションが使用されるが、全幅が拡大した今、より良いコントロール性を求めて、通常より長いサイズのサスペンション・アームが広くなったマウントに対して使われている。関連して特にスピードバンプを越える際、サスペンションのストロークが少ない故に起こる不快さが幾分改良された。

現地でスマート・プロダクト・マーケティングのトップであるフランク・ジマーマンは我々に2台のプロトタイプ披露してくれたが、今回は全長を2.69mmとして設計段階からこだわったと語った。

ジマーマンはこれまでの顧客調査によりスマートが選ばれる理由はその特徴的な全長だと言っており、われわれもそれに異論を挟む余地がないことは明らかである。車両高も歴代から引き継いだサイズとなることが決まった。乗降性の高いドアやドライビング時の高いアイ・ポイントも気にいられる要因であるだろう。また今回全幅を拡大した恩恵は大きく、背の高いジマーマンと少し太めの私の2人が乗車しても窮屈さは微塵も感じさせず、居住性はこれまで以上の高評価に繋がる予感がする。

私に割り当てられた工場内の試乗コースは郵便切手の面積より狭いのではないかと思わせるような場所であり、私はどうしようか困惑したが、ジマーマンの手にゆだねられたスマート・フォーツーは驚くような挙動で7m四方ほどの場所で旋回を繰り返した。トヨタIQでもこうはいかず、それはさながら街中でロンドン・タクシーのUターンを見るような鮮やかさであった。

私も続いてこれに挑戦し、精密ながらも軽くてくるくると回るパワーステアリングの恩恵を受け、ハンドルをフル・ロックするまで回転させなくてもこのように狭い場所で完璧なまでに車体をコントロールすることができることを発見した。これには撮影班もまた驚いた様子であった。クルマの挙動は手に取るようにわかり、ハンドルをフル・ロックさせた状態で旋回しても乱れることはなかった。全幅が拡大したことによる安定感も相まって、現在市場でこれほどまでに身軽で機敏な動きをするクルマは存在しない。

ギアボックスに関してはルノーとの関連性も持っているが、まったくと言っていいほど動きに不満はない。クラッチは軽く、左ハンドル仕様に関して言えばクラッチの横のフットスペースも十分なものである。ギア・レバーの操作感は気持ちよくストローク量は短いタイプだ。

そしていざわれわれはスマートの車両テスト長であるクリストフ・スクレンバーグと共に市街地へ繰り出す。先ほどまでの取り回しをテストするコースを走るのと打って変わって様々な道路環境があり、複雑な動作が起こり得る環境だ。

印象を掻い摘んで述べるとスポーツ・モードとマニュアル・モードを備えた新型ツインクラッチのギアボックスは非常に扱いやすい。

新型はすべての面において安定しており、コーナリング時や乗り心地の面でもその進化が乗ってみてすぐにわかる。常に印象的であったのは非常に洗練された印象でサスペンション・ブッシュの修正により段差を越える際のマナーも向上している。

私は初代スマートのオーナーとして、車格から来る強風時の高速域におけるスタビリティは依然として懸念が残るのではないかと考えていたが、彼によれば全幅を拡大した上でステアリングフィールを再考し、よりよいサスペンションを採用したことで、今となっては問題ではなく、今回はプロトタイプのために133km/hまでという制限があったが、今後改良によりもっと引き上げられることとなるであろう。

いろいろと述べてきたが果たして結論はどうなのか。市街地から戻った後、我々はしばらく動力性能に関しての話をしていたが、気がつけばその後は生産過程の詳しい内容についての話題へと移り変わっていた。なぜならこのように特異な形をしたクルマであるにも関わらず、いい意味で至って普通であったからである。

私は個人的にもこれまでスマートでかなりの距離を走ってきた。少々荒いサスペンションの動きはあったが、全長の短さから来るマイナス面を特別意識した事はない。今回のフォーツーのプロトタイプを試乗しての印象は、当然身軽さはそのままにしておきながら、より ”普通車” に正常進化していると結論ずけることができよう。

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