STOの640ps+公道との親和性 ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ 試作車へ試乗

公開 : 2022.04.16 08:25

慣れが必要なLDVIシステム

アクセルレスポンスは、例外的に鋭いSTOほどではない。一般道では扱いやすいはず。それでも、ターボ付きのエンジンでは不可能なほどに鋭敏だ。

ステアリングは、フロントタイヤからの情報量が豊か。パワーステアリングのアシスト量は、筆者の好みより少し強めに感じた。ただし、これはウラカンで共通するものではある。

ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ・プロトタイプ
ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ・プロトタイプ

ターンインはSTO級に息を呑むシャープさではないが、プロトタイプが履いていたオプションのレース仕様ブリヂストン・ポテンザが生成するグリップ力は甚大。シャシーバランスに優れ、姿勢制御もしやすい。

ドライブモードを最も優しいストラダーレにすれば、荷重移動を利用してコーナリングラインの調整が可能。スポーツ・モードを選ぶと、トラクション・コントロールが介入するまでの自由度が明確に広がる。

速度が増すほど操縦が難しくなるものの、低速域では思い切りオーバーステアで振り回すこともできる。ステアリングの反応は速度に関係なく、終始一貫しているのも美点だ。

1番過激なコルサ・モードへ切り替えると、逆にスライド量は制限される。可能な限りラップタイムを削ることが狙われている。

LDVIシステムには、慣れが必要だと感じた。旋回性を高める可変リア・ステアリングの反応に、初め若干の違和感があったのだ。

システムの動きに応じて、筆者がアクセルペダルやステアリングへ入力を加えてしまい、さらに反応が増幅される印象もあった。お互いが歩み寄るように。

動的能力やドライビング体験はトップ級

しかし、最高技術責任者を務めるマウリツィオ・レッジャーニ氏の説明を聞くと、印象が変わった。電子的な魔法を信じて良いらしい。

ブレーキングしながらコーナーの頂点へ接近。徐々にステアリングを直進状態へ戻し、アクセルペダルの踏み込み量を保つのが、最も痛快なようだ。

ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ・プロトタイプのステアリングホイールを握る筆者
ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ・プロトタイプのステアリングホイールを握る筆者

ブレーキは好感触。サーキットで試乗した過去のウラカンより重めで、感覚も掴みやすい。約1kmのストレートを一気に加速し減速、というラップを繰り返しても、フェードの兆候も見られなかった。

ヘッドルーム不足はウラカンで共通。コースの丘を高速で通過するとタイヤが一瞬浮き、ヘルメットがルーフライナーに当たっていた。

最新のジュニア・ランボルギーニは、サーキット走行が間違いなく得意分野だろう。だが、実際のドライバーにとっては、一般道でのマナーも重要なはず。STOは、公道で明らかに乗り心地が悪く騒がしい。

その反面、テクニカは一般道との親和性が高いようだ。シャシーは、路面の起伏などを上手に処理していた。

このテクニカは、最後のウラカンではない。それでも、ベスト・モデルの1つとして記憶に刻まれることになりそうだ。今回はプロトタイプだったものの、動的能力でもドライビング体験の濃密さでも、エボ RWDを凌駕している。

近い将来、ランボルギーニはハイブリッドになる。ウラカン・テクニカのようなクルマに仕上げることは、恐らく難しいだろう。数年後には、深く懐かしむ存在になりそうだ。

ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ・プロトタイプのスペック

英国価格:未定
全長:4520mm(ウラカン・エボ)
全幅:1933mm(ウラカン・エボ)
全高:1165mm(ウラカン・エボ)
最高速度:325km/h
0-97km/h加速:3.2秒
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1379kg
パワートレイン:V型10気筒5204cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:640ps/8000rpm
最大トルク:57.5kg-m/6500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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