スポーティ・フォーマル ラゴンダV12 WO.ベントレーが手掛けたV型12気筒 後編

公開 : 2022.05.15 07:06

高度な技術が注がれた、85年前のラゴンダV12。ブランド最高傑作といわれる1台を英国編集部がご紹介します。

スポーティ・フォーマルな低いボディ

今回ご紹介するラゴンダV12は、1939年製。コーチビルダーのフリーストーン&ウェッブ社による、スポーツサルーン・ボディをまとう。フランク・フィーリー氏がデザインしたラゴンダのボディは極めて美しく、外部コーチビルダーによる例は少ない。

FXB 119のナンバーを取得した初代オーナーは、英国北部のグラスゴーに住むマリオン・マシソン氏という女性。レーシングドライバー、タソ・マシソン氏の兄弟に当たる。

ラゴンダV12(1938〜1940年/英国仕様)
ラゴンダV12(1938〜1940年/英国仕様)

1947年に実業家のエドワード・ベーレンス氏が2代目オーナーになり、1955年に売却された。その後、アダムス氏という人物が購入し長期保管。1990年代に入りレストアを受け、2011年にメルセデス・ベンツ・ワールドというイベントへ姿を見せている。

近年にも、ラゴンダを得意とする専門ショップのビショップグレイ社とアルパイン・イーグル社によって丁寧な仕事が施され、素晴らしい状態を保っている。走行距離は、9万2400kmだという。

現在このクルマを取り扱うクラシックカー・ディーラー、ヴィンテージ&プレステージ社の代表を務めるリチャード・ビッダルフ氏は、「好きな場所へ運転できます。高速道路も問題ありません。ブレーキには注意が必要ですが」。と話す。

フリーストーン&ウェッブ社による低いプロポーションのボディは、「スポーティ・フォーマル」と古くから表現されてきたが、その通り。戦後のデイムラーにも雰囲気が似ている。

スペアタイヤは右側のみ。反対側には内臓の油圧ジャッキと整備道具、点検用ライトが納まっている。

軽くサウンドを放ちシルキーに回るV12

1930年代後半では、リアヒンジのスーイサイド・ドアは一般的だった。センタートンネルから、シフトレバーが伸びている。当時は珍しくなかったドア側ではないから、ズボンをレバーに引っ掛ける心配はない。

ドアは列車の1等客室のように、しっかりと閉まる。艷やかなブラックに染められたレザーシートのクッションが柔らかく、居心地が良い。ヘッドライナーはウエスト・オブ・イングランド社製のクロス張りだ。

ラゴンダV12(1938〜1940年/英国仕様)
ラゴンダV12(1938〜1940年/英国仕様)

サイドウインドウのワインダーも滑らかに回る。ドアロックや三角窓の金物が可愛い。リアガラスは小さく、死角は大きいもののプライバシーは守られる。

フロントシート側の足元には、アールデコ調のヒーターが付いている。外気を沢山入れたい場合は、上ヒンジのフロントガラスを浮かすことができる。左右の座席位置が近い。

ダッシュボード両端には、ロック付きのグローブボックス。クロームメッキで縁取られたスピードメーターとタコメーターが、中央寄りに並んでいる。ステアリングホイール・ボスから、サスペンションとスロットルの調整レバーが伸びる。

高音を響かせるスターターを回し、WO.ベントレー氏が手掛けたV型12気筒を目覚めさせる。とてもシームレスに、ラゴンダV12が発進した。

エンジンは、軽くサウンドを放ちながら、シルキーという表現がピッタリのように回る。完全に温まるまで、スロットル・レバーをオープンにずらす。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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