あと10%磨きたい ジェネシスGV60 プレミアムへ試乗 EVクロスオーバーで欧州へ攻勢

公開 : 2022.05.30 08:25

静かな車内に不足ない動力性能

GV60 プレミアムの場合、最高出力は229psで、最大トルクは35.6kg-m。現実世界で運転している限り、これ以上のパワーが必要だと感じないほどたくましい。

乗り心地は硬めながら、不快ではない。試乗したフランクフルト周辺の一般道は路面状態が良かったが、小さな凹凸を上手にいなしていた。管理状態の悪い英国では、違った印象になるかもしれないが。

ジェネシスGV60 RWD プレミアム(欧州仕様)
ジェネシスGV60 RWD プレミアム(欧州仕様)

エンジンやエグゾーストがないぶん、純EVは一般的に静かだ。車内の快適性を高めるには、ロードノイズや風切り音などを遮断する必要があるが、ジェネシスの仕事ぶりは素晴らしい。

防音性に優れたガラスを採用し、ドアのシールも入念に考えられている。油圧ブッシュを採用することで、サスペンションから伝わるノイズを吸収。タイヤの内部には、ロードノイズを打ち消すスポンジが装備されているという。

GV60 プレミアムの走りに不足はないが、GV60 スポーツ・プラスはそれ以上。大型サルーンのG80も採用する、カメラ映像で路面を読み取りアダプティブダンパーを調整する、プレビュー電子制御サスペンションを搭載している。

さらに、ツインモーター総合での最高出力は320ps。0-100km/h加速を4.0秒でこなすという俊足を考えると、プレミアム・グレードと同等の快適性には感心する。ただし、英国価格は1万9400ポンド(約310万円)もプラスされるが。

航続距離はGV60 プレミアムで516km。アウディQ4 eトロンと同等だ。

プレミアムと表現したいインテリア

インテリアは、グレード名のプレミアムという表現が適切。ダッシュボードに2面並んだ12.3インチ・モニターは、アイオニック5とのつながりを感じさせるが、細部までしっかり作り込まれ、知覚品質は大幅に引き上げられている。

ただし、一部のプラスティック製部品の質感は、ドイツ勢には及んでいない。特にドアに用いられていたシルバーやダークグレーの部品は、ヒョンデの車内にあっても不思議ではない。

ジェネシスGV60 RWD プレミアム(欧州仕様)
ジェネシスGV60 RWD プレミアム(欧州仕様)

センターコンソールに配された球状のコントローラーは新しい。180度回転し、システムがオンの時にはバイワイヤーのシフトセレクターになる。

スポーツ・プラスのドアミラーはボディ横のカメラが担い、ドア内側の左右のモニターに映像が表示される。プレミアム・グレードの場合は、従来的なミラーが備わる。メーター用モニターには、ブラインドスポット・カメラの映像も映せる。

急速充電能力は優秀。350kWの充電器を見つけられれば、10%から80%まで18分で充電できる。バッテリーの温度を調整し、最適な状態を保つ機能も内蔵されている。

高級感を巧みに醸成した、ジェネシスGV60。あと10%全体を磨き込めば、上級ブランドのライバルを焦らせる可能性はある。だが現状では、アウディQ4 eトロンなどと比べた時に、明確な強みまでは感じられなかった。

動的能力に不足はなく、独自の顧客サービスなど、GV60を選びたいと思わせる理由は少なくない。ジェネシスというブランド力の向上も、今後必要な項目に含まれるとは思う。

ジェネシスGV60 RWD プレミアム(欧州仕様)のスペック

英国価格:4万7005ポンド(約752万円)
全長:4515mm
全幅:1890mm
全高:1580mm
最高速度:185km/h
0-100km/h加速:7.8秒
航続距離:516km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2495kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
バッテリー:77.4kWhリチウムイオン
最高出力:229ps
最大トルク:35.6kg-m
ギアボックス:シングルスピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    レイチェル・バージェス

    Rachel Burgess

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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