クラシック・ベントレーの異端児 3リッター・スーパースポーツ 時速100マイル保証 後編

公開 : 2022.07.16 07:06

97年前の写真をもとに当時の姿を復元

「18台製造された3リッター・スーパースポーツで、唯一のレストアされていない1台です。しかも、オリジナルのボディを残す4台の1台でもあります」

専門家による調査を終えると、メドカーフと彼のスタッフはエンジンとシャシーをリビルド。見た目のリフレッシュも進められた。新車として購入したバーロウから受け継いだ、当時の1枚の写真をもとに、ボディとフェンダーに修正が加えられた。

ベントレー・3リッター・スーパースポーツ(1925〜1927年/英国仕様)
ベントレー・3リッター・スーパースポーツ(1925〜1927年/英国仕様)

「ボディ両サイドのランニングボードが低すぎたので、約50mm高くしています。クロームメッキされた部品も取り外しました」

メドカーフは、97年前の写真の通り、ボディをブラック・アウトするべきだと判断。ライトやフロントガラス・フレーム、ホイールのスピナーなどが、丁寧に塗られた。そのディティールが、クラシックカーとしての独自性を高めている。

レザーの内装は補修を受け、バッテリーボックスがランニングボードの下側に追加された。クラシカルなブロックリー社のタイヤが組まれ、3リッター・スーパースポーツは見事に仕上がった。

完成後のテスト走行を済ませると、メドカーフはラリーイベントへ参加。グレートブリテン島の中西部、湖水地方やノースペニンズ自然公園などを彼の妻と巡った3日間は、素晴らしい体験だったと振り返る。

「スーパースポーツは峠道を見事にこなしました。妻のケイトの運転も素晴らしかった。9フィート(約2743mm)のホイールベースで、ゴーカートのようにコーナーへ食らいつきます。夢のようなハンドリングです」

ビンテージ・ベントレーのフーリガン仕様

「発進してしまえば、ダイレクトなステアリングホイールの重さも改善されます。フライホイールが軽いので、エンジンのレスポンスも鋭い。ビンテージ・ベントレーのフーリガン仕様といったところですね。通常の3リッターとの違いは明らかです」

ベントレー・マニアの1人として、メドカーフも3リッター・スーパースポーツの存在は以前から知っていた。しかし、過去のシャシー番号1046の発見をきっかけに、特別なモデルだという理解を深めたという。

ベントレー・3リッター・スーパースポーツ(1925〜1927年/英国仕様)
ベントレー・3リッター・スーパースポーツ(1925〜1927年/英国仕様)

「何年も乗られていないクルマでしたが、エンジンはなんとか始動できました。近所でしたから、3000rpm以下に保って自宅まで走行も可能でした。住宅ローンを選ぶか、レストアを選ぶか、という究極の二択のような選択でしたが」

「完成したクルマでヒルクライム・レースに出場し、それぞれが特別な3リッターだと実感したんです。それ以来、ほかのスーパースポーツの捜索を始めたんですよ」

これまでにメドカーフは、シャシー番号1174も含めて、18台のうちの8台をレストアした。さらにオリジナル部品を用いて、5台分のショート・シャシーも制作している。

202psを発揮するWO.ベントレーの3.0L 4気筒エンジンが、1450kgの車体を駆る3リッター・スーパースポーツは、今も清々しいほど速い。2010年の北京・パリ・モーターチャレンジにも夫妻は別のクルマで参戦しており、クラス2位の成績を残している。

「スーパースポーツは、わたしたちのビジネスを一変しました。これがどんな走りをするのか、多くの人へ披露することは大きな喜びです」

協力:ウィリアム・メドカーフ社、クレア・ヘイ氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    ミック・ウォルシュ

    Mick Walsh

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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