水素エンジンのスポーツカー? アルピーヌ 自動車への水素利用「積極的」に検討

公開 : 2022.07.04 18:45  更新 : 2022.11.01 08:41

フランスのスポーツカーブランドであるアルピーヌは、内燃機関を未来に残すべく、EVと並行して水素技術の導入も「積極的」に検討しています。

水素燃焼エンジンと燃料電池

ルノー傘下のスポーツカーブランドであるアルピーヌは、内燃エンジンの未来を守る手段として、レーシングカーと公道向けモデルの両方における水素の利用を「非常に積極的に」検討しているという。

アルピーヌは昨年、イタリア・トリノに拠点を置くデザイン学校Istituto Europeo di Design(IED)の交通デザイン専攻の学生によるコンセプトカー「A4810」を公開した。2035年のハイパーカーをイメージしたもので、水素を動力源としている。

イタリアの学生が考案したアルピーヌのハイパーカー「A4810」
イタリアの学生が考案したアルピーヌのハイパーカー「A4810」

このコンセプトでは、水素燃料電池による電気駆動方式なのか、それとも水素燃焼エンジンなのかは明らかにされなかったが、今回、アルピーヌのローラン・ロッシCEOはエンジン技術を後世に残すための鍵となる技術として水素を挙げている。

7月3日に決勝が行われたF1英国GPを前に、シルバーストンでロッシCEOはAUTOCARにこう語った。

「複数のソリューションを同時に検討するのは当然のことです。アルピーヌは、電動化と両立する別の選択肢を探したい。なぜなら電動化は、好むと好まざるとにかかわらず、少なくとも将来的には自動車全体の60~70%にまで普及するからです」

「残りの領域は、用途や特性、求める機能によって異なります。積載量が多く、日々の走行距離がある程度固定されているLCV(小型商用車)では、異なるソリューションを使用する余裕があると思います」

環境負荷の低いグリーンな燃料

アルピーヌは以前から、2024年にはEVブランドに移行する計画を示しており、実際にA110の後継モデルやルノーをベースとした小型ハッチバックの開発が進められていることは確実だ。しかし、ロッシCEOのコメントからは、エンジン搭載車が今後も発売される可能性がうかがえる。

少量生産かつ「高出力」なスポーツカーについては、「持続可能な燃料が解決策になり得る」と述べているのだ。

アルピーヌA110の後継モデルはEVとして開発が進められている。
アルピーヌA110の後継モデルはEVとして開発が進められている。

「当社の場合、燃料としての水素も解決策の1つになりうると考えています。なぜなら、燃料としてだけでなく、電気を発生させる燃料電池としても水素を使うことができるからです」

「これは素晴らしいことです。水素のエンド・ツー・エンドの産業化を電動化と両立することができるので、1つの道筋になりうると考えています」

また、ロッシCEOは、アルピーヌが将来的にモータースポーツにおいても水素燃焼技術を披露することを目指しており、フォルクスワーゲンID.R(電動レーシングカーのコンセプト)のような、「ニュルブルクリンクの記録を塗り替えるような」プロトタイプを作ることも可能であると明かした。

「水素を燃料として、コンセプトの実証を行うことができるかもしれないと考えており、それが後に超高性能車や市販モデルにつながる可能性もあります」

「ル・マンが水素燃料電池を推進していることは知っていますし、それも1つの道ですが、当社はもう一歩進んで、水素を燃料とするV6を使いたいと思っています」

アルピーヌの親会社であるルノーは最近、コンセプトカーの「シーニック・ビジョン」で水素の可能性を追求している。このコンセプトは、最高出力218psの電気モーターと40kWhのバッテリー、さらに15kWの水素燃料電池システムを搭載している。

一方、水素燃焼エンジンはまだどのメーカーも量産車に採用したことがない。トヨタは、GRヤリスの1.6L 3気筒エンジンやレクサスRC Fの5.0L V8エンジンにおいて、簡単な改造で水素を燃料として使用できるようになることを実証している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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