奇跡のエンジンスポーツカー、アルピーヌA110との惜別【日本版編集長コラム#65】

公開 : 2026.01.18 12:05

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、『日本版編集長コラム』です。最近乗ったクルマの話、取材を通じて思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第65回は年末年始の約2週間を共にした『アルピーヌA110』の話です。

箱根の某食事処にて

静かな週末に自宅のデスクで執筆することの多い本コラムだが、珍しく、外でPCに向かっている。ここは箱根の某食事処。隣では年配の女性たちが孫の話で盛り上がっていて、温かいきのこ蕎麦は美味しく頂いたあとだ。

視線の先には……ブランイリゼMと呼ばれるホワイトの『アルピーヌA110』がいる。

ブランイリゼMと呼ばれるホワイトの『アルピーヌA110』。
ブランイリゼMと呼ばれるホワイトの『アルピーヌA110』。    平井大介

箱根の麓である静岡県東部に移住して1年半以上が過ぎた。週末箱根に走りにいくような生活こそ送っていないものの、たまにこうして試乗と撮影を兼ねて国道1号線を登ってくることはある。グーグルマップによれば、ここから自宅までは33分だ。

登り道がいかに楽しいかで、その印象はガラリと変わる。昨年乗った中で断トツの一番はホンダプレリュードで、当コラムでは、おかげで段々カッコよく見えてきたというデザイナーさんに大変失礼な話も書いてしまった。

A110が楽しいのは乗る前からわかっていて、しかも元々カッコいいと思ってはいたのだが、この年末年始で、その想いはさらに強くなった。

そう、当コラム#58でレポートした、昨年秋に車山高原で開催された『アルピーヌA110フルラインナップ試乗会』に参加した際、そのあまりの楽しさに勢いで「年末年始、お貸出し頂けませんか?」と広報さんに懇願。クリスマスから約2週間、A110と共に過ごすことになったからだ。

路面との距離が物理的にも精神的にも近い

いよいよ貸し出し当日。直前まで車両重量の重いEVに乗っていたこともあり、動き始めて最初に思ったのは、「軽い!」であった。実際、声にも出していたと思う。

身のこなしがいかにも軽く、着座位置が低いため、路面との距離が物理的にも精神的にも近く、気持ちまで段々と軽くなってくる。

動き始めて最初に思ったのは、「軽い!」であった。
動き始めて最初に思ったのは、「軽い!」であった。    平井大介

シートはリクライニングしないし、もちろんシートヒーターはなく、エアコンの温度をしっかりと上げておかないとこの時期は途端に体が冷えるが、それと反比例するかのように、A110に乗っていると心の温度がどんどん上がっていくのがわかる。

252psの2L直列4気筒ターボは平均的スペックではあるものの、車両重量は1120kgしかないからパワー不足を感じることはない。ターボの恩恵もあり、どの速度域でもトルクがしっかりあり、『前に出て欲しい時に、出て欲しい分だけ前に出てくれる感覚』は、ますますクルマとの距離を縮めてくれる。そしてその先に生まれるのは信頼関係だ。

ワインディングを走っていても同様で、ヒラリヒラリとフットワークよく走ってくれる。今どきは電子デバイスを駆使して重いクルマをそう感じさせない技術もかなり進んでいるが、A110はクルマの設計、レイアウトのよさで素直に気持ちよく曲がってくれる印象で、「ミドシップって楽しい! A110って楽しい!」と心から思わせてくれる。

ドライビングポジションも良好で、細かい点ではフットレストの角度が適度に起きているのが気に入っている。そこに左足を置いた瞬間、A110との一体感が高まるように思えるからだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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