FRPボディにV6エンジンのキットカー 期待以上のギルバーン・ジェニーとインベーダー 前編

公開 : 2022.07.24 07:05  更新 : 2022.08.08 07:06

160km/hの高速クルージングも快適

3.0Lのフォード製V6には、高効率のエグゾースト・マニフォールドが組まれ、5psの出力向上を達成。キャブレターはウェーバーの40DFAで、オイルクーラーも備わっていた。発表時には2.5Lエンジンも用意されていたが、人気がなく廃版となっている。

ギルバーンが週末のガレージで組み立てられると主張したキット価格は、1425ポンド。塗装まで仕上がったボディに、オーナーがエンジンやトランスミッション、ビニールレザー張りのインテリアなどを組み付けることで、完成車より460ポンド安かった。

ギルバーン・ジェニー(1966〜1969年/英国仕様)
ギルバーン・ジェニー(1966〜1969年/英国仕様)

少なくない英国人が、自宅での組み立てを楽しんだ。完成したジェニーは、安全性の確認と初回の無料点検のために、ギルバーンへ招待された。

ハザードランプにリクライニングシート、電動エンジンファン、消化器、調整式のリアダンパー、ツイン燃料タンクなどが標準装備。オプションとして、英国オペルの部品を用いたパワーウィンドウも装備可能だった。

車重は1t前後と軽く、24.9kg-mの最大トルクを受け止めるため、ZF社製のリミテッドスリップ・デフも追加できた。人気のオプションだったのがオーバードライブ。1000rpm当たり43.4km/hの比率で、160km/hでの高速クルージングも快適にこなせた。

シャシーの設計は、基本的にはGTのキャリーオーバー。MGB由来のフロント・サスペンションと、フロントがディスク、リアがドラムというブレーキ構成だった。

1週間に6台の生産で10か月の納車待ち

生産初期の40台は、オースチン・ヒーレー譲りのリアアクスルが理由で、ワイヤーホイールを履いていた。MGCのリアアクスルへ変更されると、オリジナルのアルミホイールへ切り替えられている。

英国内に用意されたディーラーは4か所。自動車メディアの試乗レビューは上々で、1970年代が始まるまでに年間50台前後の注文があったという。ジェニーの最終的な生産台数は、約200台だといわれている。

ギルバーン・インベーダー Mk I(1969〜1971年/英国仕様)
ギルバーン・インベーダー Mk I(1969〜1971年/英国仕様)

一方でスミスとフリーズは、ギルバーンをエース・キャピタル・ホールディングス社へ1968年に売却。10万ポンドを投入し、1日1台のジェニーを生産するという野心的な計画が立てられた。

1969年にはジェニーの改良版、インベーダーが登場。強化されたシャシーに、MGCのフロント回りが組まれていた。見た目の違いは、ボディ面に一体化したドアハンドルと小さなテールライト程度だが、初期には採用されていないからややこしい。

インテリアの変更は大きく、デザインが新しくなり、ダッシュボードにはソフトパッドとウッドパネルが与えられた。安全性へ配慮されたステアリングホイールと、2速ワイパーも装備する。

1969年には、スポーツクーペのフォード・カプリ3000GTも発売されている。キット販売のインベーダーの方が500ポンド高かったものの販売は好調で、約10か月の納車待ちだったらしい。

実際、1971年に更新されたインベーダー Mk IIは、1週間に6台というペースで生産されていた。ボディの成形型が1台だけで、それ以上の増産は難しかっただろう。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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