車内へ充満する轟音と熱気 ギルバーン・シボレーGT(2) 今でもパワフルでスリリング 再び狙う表彰台

公開 : 2026.04.04 17:50

英国で作られていたキットカー、ギルバーンのエンジンルームへ押し込まれたシボレーのV8ユニット。60年を経て現オーナーが見事にレストア。UK編集部が言葉を失う、過激なワンオフマシンとは?

エンジンなしの状態で買手は見つからず

ギルバーン・シボレーGTは、1966年には現役を退く流れにあった。オーナーのケン・ウィルソン氏はV8エンジンを降ろし、自身のパワーボートへ換装してしまう。2年後に売りに出されるが、エンジンなしの状態では買手が見つからなかった。

ウィルソンは1974年に心臓発作でこの世を去り、ギルバーンのディーラーだったエース・モーターズ社が10年以上も車両を保管。処理に悩んだ代表は、この存在を伝えるべく、ギルバーン・オーナーズクラブへ1982年に手紙を送る。

ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)
ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

救世主になったのは、デビッド・エリソン氏。その時点での走行距離は、1425kmほどだったという。

彼はロータスの1.6Lツインカムエンジンを手配し、1990年からクラシックカー・ラリーなどへ参戦。しかし1993年以降、レースへ出ることはなかった。2011年にV8エンジン化を計画するものの、それも実現しなかった。

フェンダーからチラ見えするレーシングタイヤ

5年後に売りに出され、1人のオーナーを挟み、現オーナーのマイク・ランプロー氏が購入したのは2023年。ヒストリックカー・レースへ参戦できるよう、彼はすぐにレストアを始め、1965年にウィルソンが走らせたのと近いスペックで仕上げられた。

ボディは前後が切り立ち、ホイールベースは短い。ダンロップのレーシングタイヤが、フェンダーからチラ見えする。ボンネットにはエアインテークが開き、テールフィンは控えめ。スタイリッシュとは呼べなくても、好戦的な出で立ちだ。

ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)
ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

現代の参戦規制に合わせて、完全に当時へ忠実というわけではない。シートは、ティレット社製の深いバケット。センターコンソールには、現代的なスイッチ類が並ぶ。ドアの内張りや助手席側のシートは、オリジナルのままだという。

ホイールは、BRMのスチールを再現。配線関係はすべて引き直され、燃料タンクは現代的なレース用が載る。

エンジンは5.7Lへ 車内へ充満する轟音と熱気

ヘッドがアルミ製のV8エンジンは、60年前の4.6Lではなく、更に大きい5.7Lのスモールブロック。計測では、リアタイヤへ約350psの最高出力が届けられているらしい。トランスミッションはジャガー由来の4速MTで、クラッチも強化品が組まれている。

ランプローは、まだセッティングは完璧ではないと話すが、コースインできる状態にはある。ギルバーンの創業者、ジャイルズ・スミス氏とバーナード・フリーゼ氏の2人が、テスト走行していたであろう、カッスルクーム・サーキットでの試乗へ胸が踊る。

ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)
ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ロールケージをくぐり、パッドの薄いカーボンシェル・バケットシートへ身体をはめる。ペダルは右側へオフセットし、左足はV8エンジンと4速MTを覆う、巨大なトンネルに当たる。短いシフトレバーは、ストロークが長い。

ステアリングコラムは延長されているものの、腕はまっすぐ伸ばすスタイル。リンクが渋く、変速はしにくいが、太いトルクで3速と4速があれば不満なし。発進直後から、轟音が車内へ充満する。V8エンジンが放つ熱も。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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